研究課題/領域番号 |
15K04751
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
畑上 到 金沢大学, 電子情報学系, 教授 (50218476)
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研究分担者 |
長山 雅晴 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (20314289)
税所 康正 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70195973)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ランダムネス / 反応拡散方程式 / フィッツフー-南雲モデル / 安定性 |
研究実績の概要 |
反応拡散方程式系のフィッツフー-南雲モデルについて,多数の定常解が共存する分岐点近傍において,離散パラーメータやランダムネスの大きさを変化させた場合に現れる遷移過程の構造変化を追跡した.分岐点近傍領域では,鋭敏な初期値依存性による非常に複雑な構造が見られるが,それらを通常の初期条件から求めることは難しい.そこで本研究では,あらゆる漸近解を得る上で有効であると思われる新規の初期条件を構成する方法を提案した.これにより,計算領域で定性的に均一な構造をもつ大域解だけでなく,複数の解が空間的に共存する安定な解を得ることに成功した.この場合,二つの解の一方が周期的な波動運動をしている場合においても,静止している解の側で位相の同期が生じた場合には,境界は安定して静止していることが明らかにされた.また,計算領域の広さの漸近解の構造への依存性についても明らかにした.以上の結果はすでに査読付き論文誌に投稿済みである. また同じく反応拡散方程式系のフィッツフー-南雲モデルの別のパラメーター領域に対して,上記の初期条件を構成する方法を適用し,2つの異なる均一解の間に静止する境界をもつ解を構成した.さらにランダムネスによりこの境界の曲率が変化する現象を追跡し,その影響について解析を行った.得られた結果については投稿準備中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度については,反応拡散方程式系の解構造,特に複数の解が共存する場合のランダムネスによる安定度の差異についての解析を最重要ポイントとして研究を推進してきた.この結果,通常の初期条件では計算領域全体に定性的に広がった単独の解が得られるのみであったが,新規の方法で初期条件を与えることにより,複数の解が計算領域に安定に共存する現象が捉えられ,解の分岐過程を考察する上で興味ある解析法を確立できたと思われる.またこの方法は,数値流体におけるランダムネスの影響を解析したときに判明した現象を基にしており,反応拡散方程式系だけでなく,その他の非線型系にも適用できるものと思われる.今後の研究の進展においても貴重な知見であると思われる.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度における,新規の初期条件構成法の適用による,計算領域に複数の解が共存する現象から安定度を見積もるアプローチを進展させ,分岐点前後での解の安定度へのランダムネスの影響を明らかにする.特に,分岐により新たな安定解が出現する場合においての影響に焦点を絞り解析を行う.対象とするモデルについては,反応拡散方程式系を中心に,それから派生する常微分方程式系についても対象を広げる予定である.またできれば,数値流体計算等への展開も視野に入れて準備を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
国内学会(応用数理学会)年会の実行委員長としての業務が入り,国内及び国外への出張回数,研究集会への参加の回数が少なくなったため,旅費,研究集会への参加費が予定より少なく計上されたためである.なお研究を進める上での物品購入は問題なく計上されており,これによる成果も得られている.
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次年度使用額の使用計画 |
28年度においては,研究集会への参加・分担者との研究連絡のための出張が予定回数より多くなることが予想されるので,旅費として計上されることになると思われる.物品費等については予定通りである.
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