研究課題
近年放射光利用技術の進歩により,X線領域における分光学が急速に進展した。X線照射後の放出電子や光の吸収,発光による情報は分子の局所構造や反応ダイナミクスを反映する。金属錯体の関与する触媒反応では活性中心にある金属原子が直接関与するため,X線分光法は反応機構の解明のための有力なツールの1つとして注目されている。本研究課題の目標は金属を含む系へのX線分光に対する新規理論計算手法の確立である。今回の申請で注目している分光法はK殻およびL殻励起のX線吸収スペクトル法(XAS)であり,非経験的分子軌道法および密度汎関数法に基づく計算手法を開発する。初年度はXAS計算手法の開発を行う。K殻XASスペクトル計算手法として,既存のDFTコード”DeMon”にX線スペクトル計算コードを移植する。L殻XASスペクトル計算手法として,分子軌道計算コード”Molpro”を用いた計算手法を開発した。またK殻,L殻XAS計算に対する準備として,励起電子の相対論補正項をLi原子からKr原子まで系統的に算出した。現在これら計算結果をまとめ,論文を執筆中である。
2: おおむね順調に進展している
初年度はXAS計算手法の開発を行う予定であった。またプログラム開発およびテスト計算を行うため,演算サーバとしてワークステーションを1台設置した。K殻XAS,L殻XAS計算手法両方とも順調に行うことができた。また励起内殻電子の相対論補正項をLi原子からKr原子まで系統的に算出した。現在これら計算結果をまとめ,論文を執筆中である。以上より,実施計画書に記載した計画通り,研究はおおむね順調に進展している。
できるだけ多くの第一遷移金属原子に対し,標準的なスペクトルを測定し,計算との比較を行う。それぞれの金属薄膜を用意し,測定はSPring-8, SAGA-LSのような放射光施設を利用する。得られたスペクトルと計算スペクトルを比較し,計算精度の確認を行うとともに,表面,バルク状態の評価を行う。研究推進を加速するため,既存の演算サーバのメモリ増強を行い,容量の増強を図る。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 6件、 査読あり 13件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件)
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