研究課題/領域番号 |
15K04762
|
研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
金山 寛 日本女子大学, 理学部, 教授 (90294884)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | BDD-DIAG前処理 / DIAG前処理 / 静磁場解析 / 熱対流解析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、領域分割法のインターフェース問題を記述する連立1次方程式を解く際の前処理行列の統一的構築方法を確立し、見通しのよい高速化を実現することにより、公開ソフトウェアとして研究成果を産業応用推進に結びつけることである。
熱対流解析のほうは熱方程式のBDD前処理対応と規模の拡大だけを実現すれば良いところまできている。あと1年で公開できるところまでもっていけると思っていたので、2016年度は既存技術の水素拡散等の新規応用分野への適用に力を注いだ。実際、ソフトウェア開発の点から見れば、熱対流解析は熱方程式と流れの基礎方程式の弱連成解析として定式化しており、経験のある熱方程式の部分だけの改良が残っているので、あと1年あれば十分と考えている。熱方程式の部分の改良にはこれまでのADVENTURE_Thermal開発の経験が活かせると思っている。
静磁場解析は2015年度までに、1コア処理に限定しているがBDD-DIAGという前処理が有効であることを確認した。これを受けて2016年度は、その内容の再確認に時間を割いた。その結果当初予定していたラグランジュ乗数付きの対応や渦電流解析への対応が後回しになったが、国際的にみてもこれまでにない成果が出つつあるので、静磁場解析でのBDD-DIAG前処理の有効性の再確認に時間を割いたほうがよいと判断した。その結果、反復回数では簡易対角スケーリング(DIAG)前処理とほぼ変わらないレベルの前処理ができていると言えるが、対象としているテスト問題が小さく、もっと大規模な問題での比較が必須と思われる。そのためにはマルチコア処理が必須なので、残された1年でそれを可能にしたい。2017年度前半に熱対流解析で規模拡大の経験を積むので、その経験で2017年度後半に、静磁場のBDD-DIAG前処理のマルチコア処理を実現し、産業応用につなげたいと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
静磁場解析および熱対流解析ともに、計算規模の拡大において、 共通の問題点に遭遇し、産業応用推進にまで研究を進めることが できていない。最後の1年で挽回したい。 もう少し具体的に述べると、インターフェース問題を考えるときの連立1次方程式を 前処理付き共役勾配法で解くことを中心に考えているが、その際に係数行列S(シュア補元行列)とベクトルpの積q=Spを求めることが必要になる。我々の開発しているADVENTUREシステムでは、Sを陽に作成せずにこれを行っているので、この積の計算はそれほど容易でない。そのため、現時点ではSを陽に作成するライブラリを使っているため、その結果として100万自由度以上の大規模問題が処理できない状況になっている。熱方程式ではADVENTURE_Thermalの開発経験があるので、2017年度前半でこの問題を克服し、その経験をもとに、2017年度後半で静磁場解析でもSを陽に作成しないやり方を可能にしたいと思っている。 この共通の問題点が克服できれば、100万自由度以上の大規模問題への応用が可能になるので、産業応用推進の道が一気に開けてくると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
熱対流解析のほうは規模の拡大についての方針が固まっているので、 この1年間で十分挽回できると思っているが、 静磁場解析のほうはようやくBDD-DIAGという前処理が一つ見えてきた段階なので、これをベースに規模の拡大を図り、産業応用の推進に結びつけていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2015年度に別途行ったJKA研究で購入した計算機等が有効に活用できている。そのうえで大規模問題への対応が少し遅れているので、その後、計算機を増強する必要が弱まり、物品費が予定より減少している。
|
次年度使用額の使用計画 |
上記の通り物品費は予定より減少した。しかし2017年度から常駐場所が地方に変更になったので、研究打ち合わせ等の旅費が増大すると予想される。最終的にはしっかり使い切る予定である。
|
備考 |
2016年度で日本女子大学定年退職。 2017年度から日本女子大学客員研究員。
|