本研究の目的は、領域分割法のインターフェース問題を記述する連立1次方程式を解く際の前処理行列の統一的構築方法を確立し、見通しの良い高速化を実現することにより、公開ソフトウェアとして研究成果を産業応用推進に結びつけることである。
最終年度の2017年度は静磁場解析のマルチパート化を実現することに全精力を集中した。その結果、2パート問題だけは何とか目途をつけたが、予想以上に時間がかかり、4パート問題を含めたテスト問題も用意したのだが、有効性を確かめるだけの十分なテストを年度内に終了することができなかった。今後、機会を見つけて、開発したソフトウェア技術の有効性を定量的に示していき、産業応用に結びつけていきたい。このマルチパート化を実現する過程で、課題であったq=Sp(Sはシュアコンプリメント行列)の計算方法について本来のSを陽に作成しない方法についての知見が得られ、いくつかの方法でそれが可能になったことは大きな収穫と言える。これにより、100万自由度の壁を払い、更なる大規模化に道筋をつけることができた。
磁場解析のマルチパート化に全精力を注ぎこんだため、実装できる目途の立っている熱対流解析のなかの熱解析の部分の高速化も後回しになった。これも目途は立っているので、機会を見つけて、実現していきたいと考えている。熱対流解析の部分は中国に戻った中山大学のYao准教授が九州大学の博士課程に在学中のころ開発した部分が主要部をなしているので、彼との共同研究を今後も続けていく予定である。
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