大規模かつ複雑なネットワークを管理する運用者(オペレータ)は、ネットワークの安全性及び高信頼性を実現するために、限られたネットワーク資源を大多数のネットワーク利用者(ユーザ)に公平に割り当てる必要がある。これは、オペレータが、ユーザの満足度関数(資源割り当てに関する公平さを表す指標)の総和の最大解を見つけることと同値である。その一方で、オペレータは、ネットワークの管理及び運用により得られる利潤を最大にする誘因(インセンティブ)をもつ。このような2つの状況を勘案した「ネットワーク資源割り当て問題」を解くことの困難さは、ネットワークの大規模性及び複雑性により、オペレータが全ユーザの目的関数及び制約集合の形状を正しく知ることができないことにある。本研究の目的は、各ユーザの固有情報(各ユーザの満足度関数と制約集合)と隣接ユーザから送信される情報のみを利用して構成される分散型最適化アルゴリズムを開発し、「ネットワーク資源割り当て問題」を解くことである。
平成29年度では、「ネットワーク資源割り当て問題」を一般化した制約付き最適化問題を解くための分散型最適化アルゴリズムの開発に成功した。これらの成果は、平成30年度から開始予定の研究課題「確率的不動点最適化アルゴリズムとアンサンブル学習への応用」(基盤研究(C): 18K11184)に現れる確率的凸最適化問題を解決するためのアイデアにもなっている。
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