頂点作用素代数において,通常の加群に対して定義されていたintertwining operatorを,次数付き弱加群に対して拡張した.通常の加群においては,各斉次空間にヴィラソロ元が半単純に作用していることから,intertwining operatorは作用素係数の複素べき級数として定義されていた.しかし,ヴィラソロ元の作用が必ずしも半単純でない次数付き加群においては,複素べき級数という条件は強すぎるため,条件を適切に緩める必要がある.そこで筆者は,複素べきではなくヴィラソロ元の作用をべきとするような作用素係数の級数としてintertwining operatorを定義した.拡張されたintertwining operatorを次数付きintertwining operatorと呼んでいる.これは,次数付き弱加群の特別な場合である対数的加群に対して定義されていた,対数的intertwining operatorの拡張にもなっている.さらにヅー代数の両側加群を用いた,次数付きintertwining operatorの次元公式を与えた.この公式はフレンケル-ズー,およびリーが通常の加群に対して与えていたintertwining operatorの次元公式の拡張になっている.ハイゼンベルグ代数やヴィラソロ代数において,特別な次数付き加群に対しては,この公式を用いて次数付きintertwining operatorの次元を計算できる.
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