研究課題/領域番号 |
15K04773
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山崎 隆雄 東北大学, 理学研究科, 教授 (00312794)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 代数学 / 数論幾何 / 代数幾何学 / 整数論 / モチーフ |
研究実績の概要 |
Voevodskyの構成したモチーフの三角圏は代数的サイクルやモチーフの研究における基礎理論として広く用いられている。Bruno Kahn氏・斎藤秀司氏との共同で、この圏のモジュラスによる拡張を研究している。これまでに、モジュラス付きモチーフの三角圏を構成し、特異点解消の仮定の下で次のような性質を確立した。(1)この圏における射の空間はモジュラス付きSuslinコホモロジーを正しく計算する。応用としてモジュラス付きSuslinホモロジーがNisnevich降下を満たすことが証明できる。(2)この圏には中心が相互層の圏と同値となるようなt-構造が入る。相互層はホモトピー不変層の拡張としてわれわれが以前の研究でで導入したものであるが、その理論との関係が明らかになった。(3)モジュラス付き曲線のモチーフは一般ヤコビ多様体で記述される。これはKay Ruelling氏との共同研究の結果の応用として得られる。 最近のAyoubとBarbier-Vialeによる研究で、曲線と被約な因子の組から生じるNoriモチーフはDeligne 1-モチーフの圏と同値になることが示された。この拡張をFlorian Ivorra氏と共同で研究した。被約とは限らないモジュラス付き曲線から生じるNoriモチーフを構成し、基礎体が有理数体の場合はそれがLaumonの意味の1-モチーフと同値になることを証明した。基礎体に関する過程は技術的なもので、さらなる一般化が望まれる。 モジュラー曲線のヤコビ多様体の有理点のねじれ部分は、数論における重要な研究対象としてMazurなどにより多くの研究がなされてきた。同様な問題をカスプをモジュラスとする一般ヤコビ多様体に対して考えることができる。Yifan Yang氏との共同研究で、レベルが素数の冪の場合に、この問題に満足のいく解答を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Bruno Kahn氏・斎藤秀司氏との共同研究では、昨年度までにモジュラス付きモチーフの三角圏が構成できていた。その基本性質の確立が重要な課題であったが、それに関して上記のような多くの進展を得ることができた。さらに、このモジュラス付きモチーフというテーマについて、これとは異なる側面からも研究が進展した。具体的には上記したNoriモチーフに関するFlorian Ivorra氏との共同研究や、モジュラー曲線の一般ヤコビ多様体に関するYifan Yang氏との共同研究であるが、これらはどちらも当初の計画では予期していなかったもので、期待以上の進展がみられている。
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今後の研究の推進方策 |
Bruno Kahn氏・斎藤秀司氏との共同研究は、プレプリントをまとめる最終段階に達している。まずはこれを完成させて公開する。6月にFlorian Ivorra氏を東北大学に20日ほど招聘するので、この期間はNoriモチーフについて集中的に議論を行う。また、Kay Ruelling氏と進めている相対Picard群とモジュラス付きサイクルに関する共同研究も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
Florian Ivorra氏を20日ほど東北大学に招聘する計画があり、28年度中に実施することを考えていたが、日程の調整がつかずに29年度にずれ込んだ。これは最終的に、29年6月に実施することで確定した。
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次年度使用額の使用計画 |
上記のように、Florian Ivorra氏を6月3日から21日まで東北大学に招聘する。その旅費に用いる。
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