研究実績の概要 |
前年度までに私は海外研究協力者の X.Cao氏(北京石油化工学院)と W.Zhai氏(中国鉱業大学)とともに, 拡張されたセルバーグクラスに属するゼータ関数の係数和に関する数論的誤差項のTong-type truncated formula を完成し,その結果を数論的誤差項の短区間平均値定理に応用してきた.Tong-type truncated formula を適用するには,ゼータ関数の次数が d ならば, s=σ+it における2乗平均が T の 1+ε乗で抑えられるようなσの下限が(d+1)/2d より小という条件が必要であった.これはかなりきつい条件である.そのため Tong-type truncated formulaを, 臨界線 1/2+it 上の2乗平均の大きさを用いて作り直すというのが昨年度からの継続目標であった.この目標は達成でき,臨界線上の1乗平均と2乗平均のTの冪指数の値を用いて Tong-type truncated formula の第2項から第4項に現れる重要な積分 I(λ,M,N,y) の1乗平均,及び2乗平均を上から評価することができた.またこれを用いて数論的誤差項(特に次数が3,4の場合)の短区間平均値定理を再度導くことができた.これを従来の結果と比較すると,改良できる場合とできない場合があることに気づいた.この辺の事情は今後解明されるべき問題である. 通常の約数問題の誤差項Δ(x)の場合に, Heath-Brown がVoronoi公式を用いてその分布関数を詳しく調べているが,我々は Tong-type truncated formula の新しい応用として,非対称多次元約数問題の場合にその誤差項の分布関数について,彼の結果を拡張することに成功した.
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