本研究は、主に連分数を用いて実二次体を分析し、その中でも類数に関する情報を引き出すことを目的としている。特に、類数が1となる実二次体が無数に存在するという、実二次体に関するガウスの類数1問題を解くことが一つの大きな目標である。各偶数周期の最小元には類数1の実二次体を与える自然数が並んでいるという数値実験の結果から、「pre-ELE型有限列」という概念を導入し、各偶数周期の最小元の分析を行っている。本年度の成果を次に挙げる。 1.類数公式や横井不変量を利用して類数の下から評価し、特定の増殖変換から作られたpre-ELE型有限列から構成される実二次体の類数が1とならないことを、インドで行われた国際研究集会で発表した。 2.pre-ELE型有限列の構成法を与えた論文がKyushu Journal of Mathematicsに掲載された。 3.√dの連分数展開より得られる不変量Q_nの分析を行い、Q_n=3となるための必要十分条件を与えた。また、実二次体Q(√d)の類数が1の場合には、この条件がある明快な条件と同値であることを示した。 4.実二次体の一般の整環の性質をまとめ直し、1988年にStephan Louboutin氏が与えた実二次体の類数に関する結果の拡張を行った。 5.与えられた任意の奇数nに対し、n次巡回群を部分群に持つようなイデアル類群を持つ虚二次体の無限族を構成した論文がJournal of Number Theoryに掲載された。この結果は、ハリスチャンドラ研究所のKalyan Chakraborty氏、Azizul Hoque氏及びインド科学教育研究大学ベランプール校のPrem P. Pandey氏との共同研究によるものである。
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