研究実績の概要 |
非アルキメデス体上の簡約代数群のひとつである、符号(3,2)の直交群上の既約許容表現空間のベクトルであるWhittaker関数達における、NewForm理論の簡略化を行った。 NewFormとは、保型形式の局所表現である既約許容表現において最も安定したベクトルであり、Hecke作用素とよばれる線形作用素に対する固有ベクトルであり、適当な積分を取ることでその表現に付随するゼータ関数が得られるものである。従来のNewForm理論では、複雑なHecke環(Hecke作用素の成す環)の議論が必要だったが、Whittaker関数に高さの概念を導入し、一番高い所で、ただひとつのHecke作用素の働きをみるといった議論をすることで、NewForm理論が、容易に得られることとなった。つまり、これにより、符号(3,2)の直交群上のNewForm理論には、複雑なHecke環の構造を調べる必要はなくなったのである。 また以前、私は、符号(4,2)の直交群上の既約許容表現におけるNewForm理論を構築したが、この場合、Hecke環の構造が、符号(3,2)の直交群における場合より、更に圧倒的に複雑であった。以前の研究で得られた、符号(4,2)の直交群上の既約許容表現の満たす関数等式の形も符号(3,2)の場合とは、異なるものであった。 そこで、符号(3,2)の直交群の場合同様の手法を符号(4,2)の直交群上の既約許容表現に適用し、関数等式を用いて、Whittaker関数を観察することにより、この場合のNewForm理論も容易に得られることとなった。関数等式とは、既約許容表現のもつ対称性を表す等式であり、既約許容表現空間のWhittaker関数もその対称性をもつといった関係式である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既存のSO(2n+1,2)のNewForm理論とSO(2n,2)のそれとでは、群の形は似ているが、函数等式の登場人物が異なっており、それに伴いNewForm理論も複雑になる。しかし、既存のSO(2n+1,2)の理論を簡略化することにより、SO(2n,2)の理論も劇的に簡略化されることが予想される。
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