研究実績の概要 |
①p-進数体上のn次一般線形群GL(n)の既約許容表現に関する新形式(Newform)のゼータ積分やヘッケ固有値による特徴付けをおこなった. 既約許容表現の新形式理論とは, 表現空間に関数等式に対応した然るべき部分空間達のフィルトレーションを与えたとき, 極小空間が一次元であり, その一次元空間を張るベクトル(新形式とよばれる)のゼータ積分が, その既約表現のL-関数と一致するといったものだといえる. GL(n)の場合は, 極小空間が一次元であることが示されており(Math. Ann 1983), その新形式のヘッケ固有値が求められ(Jour. Number Theory. 2012), 新形式のゼータ積分が既約許容表現のL-関数と一致することが示されていた(Jour. Math. Japan 2014). 今回, これらのヘッケ固有値やゼータ積分が新形式を特徴づけることを示した. ②また①の結果を運用する事により, 前年度までの研究で得ていた, p-進数体上の4次一般シンプレクティック群GSp(4)の新形式理論が, Langlandsパラメータと対応する然るべきものであることを示すことができた. GSp(4)とGL(4)の既約許容表現はテータ対応とよばれる方法で対応することが知られていて, これを運用することで, GL(n)のラングランズ予想(Invent. Math 2000)から, ラングランズ予想が解決されていた(Ann.Math 2011)のだが, このテータ対応を明示的に表示することで, GSp(4)の新形式とGL(4)の新形式が確かに対応し, 従ってLanglandsパラメータも対応することを示したのである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GSp(4)の新形式理論が, Langlandsパラメータと対応していることが示すことができ, 整数論と深くむすびついていることがわかった. Langlands予想が正しいことはGL(n)とGSp(4)でしかしられていないので, 意義深いことであると考えられる. テータ対応において, 既約表現の対応が知られているが, より深いHecke理論, Hecke環の対応までは, 表現が不分岐な場合しか知られていない. 今回得られた, 明示的なGL(4)とGSp(4)でのテータ対応と両サイドでの新形式理論の比較は, 一般化の可能性を秘めているように思われる.
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今後の研究の推進方策 |
GSp(4)の関数等式を示す際, ある関手のなす空間が, 1次元であることを示すことが, 鍵となるのだが, その関手を調べていく内に, それとは異なる関手の空間の1次元性が得られた. この関手は, 特殊シンプレクティック群Sp(4)の関数等式と対応していると考えられる. だが, ゼータ積分の定義などが,関数等式の片方で収束性の問題が, まだ巧くいっていない. 今年度はこの問題や, GSp(4)とGL(4)で巧くいった分岐Hecke環のテータ対応が一般化できないかについて考えてみたい.
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