研究実績の概要 |
2015年度は、指数型不定方程式に関する3本の論文を出版できた。
第一の論文は、Euler 商E_m(a)に関する論文である。ここで、m をa と互いに素な正の整数とするとき、E_m(a)を E_m(a)=(a^φ(m)-1)/m で定義する。Euler の定理より、E_m(a)は整数である。このとき、指数型不定方程式 E_m(a)=x^l (x,l≧2) が、いくつかの条件の下で、正の整数解 (a,m,x,l)= (2,7,3,2),(3,5,4,2),(3,10,2,3),(5,3,2,3),(7,6,2,3)だけを持つことを示した。第二の論文は、不定方程式(12m^2 + 1)^x + (13m^2-1)^y = (5m)^zに関する論文である。この不定方程式が、いくつかの条件の下で、ただ一つの正の整数解 (x,y,z)=(1,1,2)を持つことを示した。その証明は、congruence methodなどの初等的方法とBaker理論による。第三の論文は、ピタゴラス数に関する不定方程式(m^2-n^2)^x + (2mn)^y = (m^2 + n^2)^zについての論文である。Jesmanowiczは、この不定方程式がただ一つの正の整数解 (x,y,z)=(2,2,2)を持つことを予想した。2014年に私はn=2のときJesmanowicz 予想が成り立つことを証明した。本研究では、宮崎隆史氏との共同研究により、この結果をある条件の下でn≡2(mod 4)の場合に拡張した。その証明は、巧妙なJacobi記号の計算とBaker理論による。
2015年9月1日~3日にホルトホール大分サテライトキャンパスにおいて「2015大分整数論研究集会」を開催した。楕円曲線、代数的整数論、数学史に関する魅力的な講演が多数され、大いに刺激を受け、有意義な意見交換が出来た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Jesmanowicz予想について、2014年に得た結果をかなり拡張できた。n=2のとき得られた結果を、(i)n/2 が奇素数のべき、(ii)n/2 がmod 8 で1 と合同となる素因数を持たない、(iii)n/2 が平方数、の3つの条件を満たす各nまで一般化できた。また、不定方程式 (3pm^2-1)^x+(p(p-3)m^2+1)^y=(pm)^zは、m,p に関するいくつかの条件の下で、ただ一つの正の整数解 (x,y,z)=(1,1,2) を持つことを示すことができた。その証明は、二つの対数のlinear formsの評価に関する“Laurentの定理”と“Bugeaudの定理”による。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、Jesmanowicz予想についてn=4またはm^2+n^2≡1(mod 8)のときに新しい結果を得たい。そのためには、Baker理論だけでなく、楕円曲線や一般化されたFermat方程式に関する結果を利用する必要がある。また、不定方程式 (pm^2+1)^x+(qm^2-1)^y=(rm)^z (ただし p+q=r^2)が、いろいろなp,q,rに対し、ただ一つの正の整数解 (x,y,z)=(1,1,2)を持つことを示したい。
|