研究課題/領域番号 |
15K04787
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山内 卓也 東北大学, 理学研究科, 准教授 (90432707)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ガロア表現 / 保型性問題 / 二次形式 / グロスキーティング不変量 / アイゼンシュタイ級数 |
研究実績の概要 |
今年度の研究はGSp4のセール予想の解決に向けてより小さい代数群の場合をテストケースとして考察することを試みた。正確には総実代数体上のGL2や階数1のユニタリ群の場合におけるセール予想の定式化およびその証明に関するものであった。まず実2次体上のGL2の場合や虚2次体に付随する階数1のユニタリの場合にはセール予想に関連する重さ還元定理が整p進ホッジ理論が適用できるという意味で満足のいく結果が得られた。証明の方針はGSp4の場合と同じあるがユニタリ群の場合は通常軌跡の代わりに井草塔を用いた議論が必要であった。 一方、アーベル曲面の2等分点のセール予想を考察し対応する法2表現が5次対称群となりかつ複素数共役の作用が中心ではない非自明な元を定める場合、それが重さ(2,2)のジーゲル形式に対応していることが証明した。これはセール予想の簡単な場合であり、吉田予想の剰余保型性版に対応する。 年度の後半ではCho 氏と数論的サイクルの交点数とジーゲル・アイゼンシュタイン級数の微分のフーリエ係数との比較を問うクドラの問題に取り組んだ。この問題はクドラが提出して以来グロス・キーティングの先駆的な仕事の下急速に発展し多くの研究者が種々の文脈で問題を考察している。我々の研究はこれらの延長にあるのではなく原点となる場合(それはクドラ, クドラ・ラポポルト、クドラ・ラポポルト・ヤンによって証明された)の仕事を見直し概念的な証明を与えることを試み、数論的交点数を論じる舞台となる志村多様体が符号数(n,2) (ただし, nは3以下)の直交群に対応する場合にそれに成功した。これまでの証明では数論的サイクルの交点数とフーリエ係数を直接計算することで一致を見ていたのだが、我々は数論的サイクルに備わっていた帰納的構造をフーリエ係数側でも見出すことに成功し直接計算することなく帰納的構造を逐次用いることで等式を証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実二次体上のGL2や階数1のユニタリ群U(2,1)の場合に行った計算が思いのほか時間がかかったのが原因である。また, 一般の代数群の場合には正標数の代数群の表現に関する基礎知識を習得するのに時間が必要であった。特に与えられたワイル加群のテンソル積がどのように分解するかを記述するためには複雑な組み合わせ論的議論を必要となり、どの状況ならそれを具体的に記述できるかまたはガロア表現の応用上どのようなワイル加群を考えれば十分であるかは現段階においてもはっきりしておらず今後の研究に期待したい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針はテータ作用素を一般に定義するために先ず与えられた二つのワイル加群のテンソル積のジョルダンヘルダー成分がいつ直和因子になっているかを可能な限り一般の状況で理解することを試みる。ワイル群を記述するパラメータがワイル壁に遠くかつp正則である場合はその分解は既存の理論を用いて容易に記述できると推測するが、壁に近い場合には必ずしもジョルダンヘルダー成分は直和因子とはならないと思われるので、いつそれが生じるかをパラメータの言葉で正確に記述することを行う。GSp4の場合はGL2のモジュラー表現は具体的にわかっているため直接計算でこれを確認したが、一般にはJantzen等により発展した正標数体上の代数群のモジュラー表現の理論が有益であると思われるのでこれを援用する。 次に重さ還元定理を証明するためにエケダール・オールト階層上定義された部分ハッセ不変量をそのザリスキ閉包上に拡張可能であることを証明する。エケダール・オールト階層は一般にその記述は複雑であり、またどの階層を選択するかによってどのように重さが還元されるかその様相が異なってくることが予想されるため、どの選択が最適化を見出すことを実験的に先ず推察してそれを証明する。GSp6の場合にすでに考察済みであるのでそれを基に解析したい。
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