研究実績の概要 |
今年度前期(5月から9月末まで)はドイツのマックスプランク研究所に滞在しガロア表現の保型性問題を解決することに向けた基礎研究を行った。特に法pガロア表現の保型性問題の定式化に関するセール予想を詳細に定式化することを行った。考える対象をGSp4に制限して法pガロア表現の良いリフトの存在の証明に取り組んだ。これに関連する問題はGee等によってかなり一般の場合に解決されていたが「潜在的対角化可能」な保型的p進ガロア表現へのリフトが存在するという強い仮定が課されていた。私はこの仮定をGSp4の場合に取り除くことに成功した。アイデアは私自身によって構成されたテータ作用素、Parahoric restriction, そして、Jacquet-Langlands 対応を駆使して良いリフトの存在を示すことであった。
またヘンリーキム氏と若槻氏と共に行ったGSp4の正則ジーゲル形式に対する佐竹固有値に関する等分布性の問題の結果を一般のrank nの斜交群Sp2nに対するジーゲル形式のスタンダードL関数に関連する佐竹固有値の等分布性を調べ重さとレベルに比較的緩い条件を仮定することで証明した。またこの応用としてジーゲル形式に付随するスタンダードL関数の零点がlow lying zeros であることをある特定に試験関数に対して証明した。さらに同両氏とGSp4の場合の等分布性問題を小さな群からのラングランズ関手による像となっていない場合に限定しても証明することができることを示した。 後期はBocherer-Nagaokaによるテータ作用素の幾何的解釈を得るべく代数群の表現特にテンソル表現の分規則を調べ、ガウスマニン接続を計算することでテータ作用素の幾何的解釈を与え、さらには超特異点での振る舞がどのようになっているか計算した。これはメルボルン大のA. Ghitza との共同研究で現在進行中である。
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