昨年度に引き続き,ガロア群の同質類による分類に基づいた代数体のガロア拡大の研究を行った.以下のように,研究計画にほぼ沿った形で成果が得られた. (1)昨年度に得られていた,素数の判別式の異なる二つの二元二次形式での同時表現に関する結果を,精密化した.その結果,関連するガロア群の構造との関係がよりいっそう理解できるようになった.この結果は近く学術雑誌 Journal of Number theory に掲載される予定である. (2)同じ同質類にはいる二つの有限群にたいして,ガロアの逆問題は密接に関係することがこれまでの研究でわかってきている(例えば Schmid や Kida-Koda による研究).今年度はこの結果を具体的な群に適用してみることを幾つかの群に対して行った.とくに位数が2のべきの2面体群と一般四元数群のガロア群としての実現に非常に密接で単純な関係があることをみつけた.忠実な置換表現の次数に違いがあることから,一般四元数群の逆ガロア問題は同じ位数の2面体群の逆ガロア問題より難しいと一般には考えられていたが,ここで得られた結果によればその難しさにそれほどの違いがないことがわかったことになる.この結果を論文にするには,もう少し完成度を高める必要があるが,結果の骨格はできている. (3)山形で行われた整数論サマースクールで,巡回拡大についてこれまで得られた結果の報告をおこなった.その報告集が出版されている.
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