研究実績の概要 |
19世紀末にR. Dedekindは、エータ関数と呼ばれる保型形式の変換公式を研究する過程でDedekind和と呼ばれる数論的に重要な有限和を発見し、相互法則を導いた。1990年頃からG. Stevens, R. Sczech, D. Solomonは、GL(2,Q)の普遍1-コサイクルの研究を始め、1-コサイクルの構成、部分ゼータ関数の特殊値のコホモロジー的解釈、1-コサイクルのDedekind和による表示を与えた。ここで得られたコサイクルの性質から、Dedekind和の相互法則などの性質が導き出される。1990年代後半になると、S. Fukuharaは保型形式、一般Dedekind和、周期多項式の3つの空間の間に同型対応があることを示し、Dedekind和、ApostolのDedekind和とEisenstein級数との関係を明らかにした。さらに、これらの同型対応を利用して、保型形式への応用を与えた。 当該研究では、申請者が導入した標数正のDedekind和と保型形式、L-関数、コホモロジーとの関係を明らかにして、まだ解明されていない基礎的な問題を解決する。 平成29年度は、前年度の関数体上の一般化Dedekind和の研究成果からアイデアを得て、有限体上で一般化Dedekind和を導入した。その結果、Lambert級数の有限体類似を発見して、一次分数変換による変換公式を確立した。また、Dedekind和の研究を通じて得られたコタンジェント関数の性質を利用して、コタンジェント関数に関するChowlaの定理の関数体類似を証明することができた。応用として、周期的係数をもつ関数体上のDirichlet関数に対して、Baker-Birch-Wirsingの定理の類似を確立することができた。
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