研究課題/領域番号 |
15K04802
|
研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工 |
研究代表者 |
水川 裕司 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, その他部局等, 准教授 (60531762)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 有限群の表現論 / 指標 / 分割 |
研究実績の概要 |
n次対称群の既約指標表を正方行列として捉え,その行列式を計算するとnの分割の和因子を全て2回づつ掛けあわせたものになることがJamesの著書に紹介されている.これの類似として表現や共役類を添字付ける分割に様々な制限をし,指標表の小行列式を考える.とくに,Olssonによってr-正則,r-類正則という分割のクラスに制限した場合の公式が有名である.これに対して岡山大学の山田裕史とともにr-正則,r-類正則を他成分に拡張した場合を調べ幾つかの公式を発見した.さらに,ホール・リトルウッド多項式を用いたOlssonの定理の詳細な別証明も与えることが出来た.これを論文にまとめ,査読を経て採択された.また,有限群のなす等質空間と確率論に関する問題を考え,エーレンフェストの壺モデルを群による相互作用を用いることで群論的解釈を次対称群がゲルファントペアであることが本質的であるが,これの次に調べるべきモデルはr次対称群とそのヤング部分群で型が(r-2,2)で与えられるものであると思われるので,これに関しての具体的な計算を継続的に試みている.そして,これらの内容に関して2月に愛媛大学の代数学セミナーで90分の講演を行った.これに関係して,3月に開催された岡山広島代数セミナーにおいて,「有限群上の調和解析とその応用」というタイトルで講演を行った.いずれの研究も群指標と特殊函数の深い関係が本質的に使われていることに特徴がある.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調に行われている.対称群の指標表の小行列式を考えることで,幾つかの分割恒等式を見つけることが出来たことは,リー型の組合せ論において分割は最も基本的かつ根源的な研究対象なので,ある程度の満足をしている.また,2004年に環積のゲルファントペアと多変数の直交多項式の関係を発見して以来,この事実の正しい応用を探ってきたが,エーレンフェストの壺モデルの群論的一般化にたどり着くことが出来て,これに関しては大変満足している.ただし,新たな特殊函数と指標の関係を発見するなどの目標に関してはもう少しの手がかりを見つけなくてはいけないと思っている.
|
今後の研究の推進方策 |
フロベニウスーシューアの定理は有限群の表現群の中でも際立ってシンプルで,表現の実現に関しての情報をも含んでいることから面白い対称である.これを含む公式を有限群上の調和解析を用いて示すことが出来る.また,Bumpによるとこれと対称群と一般線形群の間のシューア・ワイルの相互律が直接の関係を持っている.とくに,シューア・ワイルの相互律を複素鏡映群と線形群の直積に拡張することができるが,この時に現れる複素鏡映群の指標の幾つかは実は多変数の超幾何関数型の直交多項式で記述することが出来る.以上のことをヒントに指標と直交多項式の関係を探っていきたい.とくに群の枠組みから飛躍してヘッケ環や量子群においてこれの類似を探っていきたい.
|
次年度使用額が生じた理由 |
27年度は年度末にフランスのボルドーで行われる国際研究集会に出席を予定していたが,パリのテロ事件も有り中止せざるを得なかった.また,予定していた国内出張が不運にも所属教室の業務と重なり,中止になってしまったことによる.
|
次年度使用額の使用計画 |
主に,研究集会や研究知合わせのための出張旅費として利用する.
|