研究課題/領域番号 |
15K04802
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
研究代表者 |
水川 裕司 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 総合教育学群, 准教授 (60531762)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 対称関数 / シューアのQ関数 / 有限群の等質空間 |
研究実績の概要 |
本年度はシューアのQ関数に関する研究を行った.そのために熊本大学と明海大学に出張し,熊本大学山田裕史教授と明海大学中島達洋准教授との議論を行った.これは佐藤幹夫による可積分系の研究においてKdV方程式と対称関数の関係が基本的であるが,それをより精密に記述するための研究である.その中でもシューア関数とシューアのQ関数は対称群の表現及び,スピン表現との関わり合いにより最も重要であると考えられる.前述の可積分系,ときにKdV階層を観察するとこの2つの関数たちの間に興味深いある関係式がなりたつことを予想し,それの解明に取り組んだ.その結果いくつかの場合,とくに対称関数をパラメトライズする分割の深さが1日2の場合,において予想式が成り立つことが証明された.また,長く取り組んでいた有限群の作用から生ずる相互作用をもつエーレンフェストの壺モデルに関する研究論文が7月に出版された.エーレンフェストの壺モデルは2つの壺の間を複数のボールが行き来する,という古典的な拡散モデルであり,その拡散の様子がダイアコニスによって詳細に研究され,境界時刻の前後で確率分布が劇的に変化することで収束するという,カットオフ現象が起きることが示された.それに関する多くの一般化が知られているが,本研究では多数壺の間に相互作用を群作用によって与えることを提案し,その結果多くの場合においてカットオフ現象が起きることを示した.この研究は有限群のなす等質空間とそれを環積によって”膨らましたとき”のゲルファントペアの物理的意味を確立したと言える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有限群の作用から生ずる相互作用をもつエーレンフェストの壺モデルに関する研究に関しては論文が発行された事によって一段落したといえる.また,対称関数に関する研究はなかなか,一般的な公式を得るに至ってはいないが,予想の特別な場合や,具体例などはある程度得ている.
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今後の研究の推進方策 |
今年度はまずは懸案の問題である可積分系を通じて得られるシューア関数とシューアのQ関数の関係式を,熊本大学山田裕史教授と明海大学中島達洋准教授との共同研究によって解決したい.そのための方法として,二人と議論を重ねるとともに,計算機を利用し,もうすこし複雑な例の提示などを行い,さらに対称関数に関する多くの文献にあたり,いま我々に欠けている視点を補充するという方法を採用する.また,有限群の表現論を用い,フロベニウス・シューア指数などの一般化を探りたい.基本となる理論はすでに得ているため,これも研究集会に参加し新しい知見にふれ,さらに文献などを通じて,さらなる知識の獲得をしていきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究において2,3年目に予定外の学生指導が入ることにより,計画していた出張などが十分にできなかったため,4年目まで影響が出てしまい,次年度使用額が発生してしまった.
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