研究課題/領域番号 |
15K04803
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐垣 大輔 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (40344866)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 量子アフィン代数 / 結晶基底 / パス模型 / 有限次元既約表現 / Kirillov-Reshetikhin 加群 |
研究実績の概要 |
平成27年度の当初の予定は,Kirillov-Reshetikhin (KR) クリスタルの相似性に着目することで,レベル 1 の KR クリスタル B(r,1) から,高レベルの (抽象的な) クリスタル B(r,s) (s > 1) を組合せ論的に構成することであった.その際,X=M 予想 (KR 加群の分岐則に関する予想) が正しいと仮定して, そこから KR クリスタルの構造を予想する,という方法も考えていた.KR 加群の分岐則を求めるためには,KR 加群の次数付き指標を調べる必要がある.そこで,以下の研究を行った:
当研究の主な研究対象である KR 加群のうち,レベルが 1 のものについては「レベル・ゼロ基本表現」と呼ばれる結晶基底を持つ有限次元既約加群と一致していることが知られている.また,レベル・ゼロ基本表現のいくつかのテンソル積は,量子 Weyl 加群と呼ばれており,その次数付き指標は,対称 Macdonald 多項式の t=0 での特殊化になっていることが知られている.一方,量子 Weyl 加群は,エクストリーマル・ウェイト加群の,Weyl 群の単位元に付随した,Demazure 型部分加群の商加群としても実現できることが分かっている.平成27年度の研究では,Weyl 群の任意の元に付随した Demazure 型部分加群の次数付き指標を決定した.特に,最長元に付随した Demazure 型部分加群の商加群で,その次数付き指標が非対称 Macdonald 多項式の t = \infty での特殊化になっているものを構成した.これにより,量子 Weyl 加群の次数付き指標と非対称 Macdonald 多項式の t = \infty での特殊化の間に関係があることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定であった「相似性に着目して (抽象的な) クリスタル B(r,,s) (s > 1) を組合せ論的に構成する」ということに関しては,大きな進展はなく,報告できる業績を上げることはできなかった.しかし一方で,量子 Weyl 加群や,エクストリーマル・ウェイト加群の Demazure 型部分加群の次数付き指標に関しては,非常に深い研究を行うことができた;この結果は,上述の「B(r,s) (s > 1) の組合せ論的構成」にも応用できると考える.以上を踏まえ,「おおむね順調に進展している」とする.
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今後の研究の推進方策 |
(1) 平成27年度に得られた結果も用いて,当初の予定にあった「B(r,s) (s > 1) の組合せ論的な構成」を行う. (2) 次数付き指標の研究を行うには,エクストリーマル・ウェイト加群や量子 Weyl 加群の結晶基底を,半無限 Bruhat グラフや量子 Bruhat グラフを用いて記述することが必要になる.しかし,このような記述は,現在のところ,untwisted アフィン・リー代数に対してのみ与えられている.これをねじられた (twisted) アフィン・リー代数の場合に拡張し,twisted アフィン・リー代数についても平成27年度と同様の次数付き指標の研究を行う. (3) 平成27年度に行った次数付き指標の研究を進めることで,Cherednik-Orr 予想を解決できるのではないかと期待している.そのためには,PBW フィルタ (もしくは次数) と量子 Bruhat グラフとの関係を調べる必要がある;PBW フィルタを用いた手法は,KR 加群の構造を調べるのに使うことができるため,この予想の解決を目指すことは,当研究に関しても大変有意義なことである.
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次年度使用額が生じた理由 |
(1) 当初予定していた海外出張(アメリカ)に行くことができなくなったため. (2) 研究計画に多少の変更があったため,必要になるはずであったデスクトップPCが必要なくなったため.
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は,多くの有意義な研究集会が国内外で予定されている.それらに参加するための旅費として使用する.
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