研究課題/領域番号 |
15K04805
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
岸本 崇 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20372576)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ユニポテント代数群 / 1次元加法群スキーム / affine extension / del Pezzo fibration / affine ruled |
研究実績の概要 |
今年度は海外の共同研究者(Adrien Dubouloz氏, Isac Heden氏)と,(1) ユニポテント代数群作用およびアフィン直線によるファイブレーション構造を有するアフィン代数多様体の変形族の構造解析, (2) 3次元のaffine extensionの分類, に関する共同研究を行い,共同研究(1)に関する結果の一部は海外数学雑誌に受理された.より詳細に述べると,「どのような状況下で与えられたdel Pezzo fibrationが垂直なシリンダーを含むのか?」という問題に対して,そのdel Pezzo fibrationの次数によって完全に判定できることを証明した.またDubouloz氏との共同研究を通して,(1)に関する既存の結果を一般次元に一般化することにも成功した.一方,(2)に関しては,この1年間を掛けて着実に研究は進展してきており,2~3ヶ月後(7月~8月辺り)には論文として完成見込みである.(2)の問題について,2次元の場合にはaffine extensionの考察は簡単であるのだが,3次元(以上)になると劇的に難しくなる.その難しさの1つの大きな理由は3次元(以上)の場合には,1次元加法群スキームGaによる商写像が平坦ではないという箇所にある.しかしDubouloz氏とHeden氏の協力により,punctured surface上のGa-bundleをaffineという性質を保ったまま延長させる為の判定方法をpunctured surface上のある種のコホモロジーの言葉で翻訳することに成功した.この判定法を適用して,与えられたpunctured surface上の与えられたGa-bundleに対して,どの程度沢山のaffine extensionが存在するのかという分類問題についても進歩が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「研究実績の概要」の項目で述べた2つの研究(1), (2)について,(1)については本研究課題の当初の研究目的にも込められていたことであるが,その進展については当初の予想よりは上回っている.実際に,当初は相対次元が2である場合のaffine ruledな多様体の変形の構造解析を主な研究対象にしていたのであるが,Dubouloz氏との共同研究を通して,相対次元を任意にして一般化することに成功したことは意義深い.一方,(2)については今回の科研費の研究課題では述べられたいなかった方向への発展である.(1)と(2)の研究は,研究対象としては高次元のアフィン代数多様体であるという点では共通点はあるが,その考察の手法は大きくことなる.(1)については双有理幾何学的な考察がメインであるが,(2)についてはよりアフィン的な議論が不可避である.このような大きく異なる手法での研究を可能にしているのは,Dubouloz氏とHeden氏による協力に依るところが大きい.
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては,(1)の結果を更に精密可することと,「(3) 3次元Fano多様体を一般ファイバーとして持つような森ファイバー空間に含まれるシリンダーの構造」が挙げられる.(3)については,研究代表者はDubouloz氏との共同研究で既にdel Pezzo fibrationに含まれるシリンダーの構造について精密な結果を得ることができた.そこでは,代数閉体上ではない体上で定義されているピカール数が1のdel Pezzo surfaceに含まれるシリンダーの有無がエッセンスであった.今回の問題(3)の場合も,同様に代数閉体ではない体上で定義されているピカール数が1の3次元Fano多様体に含まれているシリンダーの有無が本質的である.この種の問題は,「代数閉体まで体を拡大しておき,対応するGalois作用で安定なシリンダーをどのようにして見つけるか?」が重要であるが,一筋縄ではいかない.研究代表者は,Dubouloz氏に加えて,双有理幾何学に精通しているCheltsov氏も共同研究者として招き,(3)の問題の解決に向けた糸口を見つけたいと思っている.
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