暗号、符号、擬似乱数への代数学の応用研究を行った。具体的には、相互に関係の深い以下の3種類の研究を進めた。1.暗号と擬似乱数アルゴリズムの開発と評価、2.シミュレーションのためのグラフの分散彩色アルゴリズム及び分散彩色多項式、3.誤り訂正符号系列の存在性と電子署名への応用。具体的にはそれぞれ次のような成果を上げた。 1.暗号と擬似乱数アルゴリズムの開発と評価についてはブロック暗号とストリーム暗号の安全性の評価方法についての研究を進めた。特にAESのSubbyte変換を置換としてサイクル分解してみたところ長さ2のサイクルが見つかったことから、その偏りを用いると乱数性の悪さを効率よく検出できることを確認した。他の変換との関係も考慮して、一般にどのような条件があれば暗号の強度が低いと言えるのか更に研究を進めている。 2.シミュレーションのためのグラフの分散彩色アルゴリズム及び分散彩色多項式、については、予定していた理論研究にとどまらず、その成果の応用可能性を探る研究を進めて印象評価に効率的に応用することができた。更によく使われるイロ・レーティングとの関係についても分析して、グラフの重み更新を用いた印象評価方法をレーティング方法として書き換えることで、巨大グラフの中の部分グラフにも使えるように改良することができた。 3.誤り訂正符号系列の存在性と電子署名への応用についても存在条件についての研究を 進めて2019年12月に行われた応用数学合同研究集会で研究成果を発表した。
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