平成30年の4月の時点では,射影空間上の第1チャーン類が3のネフなベクトル束の分類ができたと思っていたが,その後,証明の検証の過程で,第2チャーン類が9の場合の証明に誤りがあることが判明したため,修正をおこなった.修正した論文は,最終的には,査読付き雑誌に掲載決定となった.以下,その結果について述べる.(1)射影空間上の第1チャーン類が3のネフなベクトル束を20通りに分類した.そのうち,第2チャーン類が9になる場合のうちの3つの場合が実際に起こるのか不明である.(2)射影空間上の第1チャーン類が3のネフなベクトル束は,第2チャーン類が7以下なら大域生成であり,8なら大域生成にならない.(3)射影平面上の第1チャーン類が3で第2チャーン類が9,そして1次のコホモロジーが0になるネフなベクトル束の中に,その存在が不明な場合がある.(4)射影空間上の第1チャーン類が3,第2チャーン類が9のネフなベクトル束が大域生成になるためのコホモロジーをつかった条件付けは可能.(5)(3)で述べたベクトル束の存在が不明なため,第1チャーン類が3,第2チャーン類が9のネフなベクトル束が大域生成になるための条件を射影空間の次元(例えば3以上等)で与えることには成功していない.次に,代数的トポロジーの知見を活かす研究分担者は,トーリック多様体X上の正則有理曲線(1次元複素空間CP(1)からXへの正則写像)の成す有限次元空間が,対応するCP(1)からXへの連続写像のなす無限次元空間をどの次元まで(ホモロジー群はホモトピー群を)近似するか(Aniyah-Jone型予想問題)を調べた.最後に,偏極多様体論の知見を活かす研究分担者は,研究代表者が上記の証明の修正の過程で,ある連接層にねじれのないことを証明したが,その証明のチェック等で,協力した.
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