本研究の研究課題にある高次元配列とは、3次元以上の高次元の直方体状に「もの」を並べたものを意味する。ここでいう「もの」とは、その研究の対象とする分野により、あるいは扱いにより、その目的に従って様々に定められるが、本研究においては、不変式を研究する関係上、対象とする可換環の元を意味する。 2次元の配列は行列と呼ばれ、古くから多くの研究者により、たくさんの研究成果が積み上げられている。本研究の対象とする群作用と不変式環に関する研究についても、多くの研究成果が積み上げられている。また、統計学で重要な分割表は、行列として表されるが、そこにひそむ潜在的な要因の数が、行列に関する重要な不変量である階数に対応していて、その理論は、多くの分野と関係をもつ。分割表とその階数の概念は、3次元以上の高次元でも定義され、様々な研究が行われている。 本研究は、そのような背景に鑑み、行列に対する群作用の理論についても、高次元化が図れないかという着想により開始された。その結果、高次元配列データに対する群作用を研究するにあたっても、高次元配列データを、しかるべく並べなおした上で行列化し、行列に対する群作用とみて調べる事が重要であることがわかってきた。この場合、元のデータが高次元配列であることは、作用する群の形に反映される。 また、様々な不変式環を調べるうちに、その不変式環の、次数付き環としての構造が、スタンダードな次数付き環、すなわち、基礎体上1次の元で生成された次数付き環になっているかという問題の重要性がわかってきた。与えられた群作用に関する不変式環の、スタンダード性を含む、可換環論的性質を調べるにあたり、単項式順序の導入による、サグビー基底の考察と、組み合わせ的手法で研究を行った結果、日比環や、それを特殊化して、私が定義したドセット日比環の重要性が再認識されたので、それらについてさらに深く研究した。
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