研究課題/領域番号 |
15K04820
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
大関 一秀 山口大学, 理工学研究科, 講師 (70445849)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 可換環論 / ヒルベルト函数 / ヒルベルト係数 / Sally加群 / 巴系イデアル |
研究実績の概要 |
可換ネーター局所環やそこに含まれるイデアルの構造を分類する際に、ヒルベルト函数の理論が有効であるということは、これまでに多くの研究者によって考えられてきた。本研究の目的は、自ら構築したヒルベルト函数の理論を駆使しながら、ネーター局所環内に含まれるイデアルの構造の分類を行うものである。 平成27年度は、巴系イデアルのヒルベルト函数の挙動解析に関して、次の成果を得た。(1)ネーター局所環上の有限生成加群の巴系イデアルの断面種数の境界を与え、その上限値を取るような巴系イデアルの特徴付けを与えた。(2)巴系イデアルの第2ヒルベルト係数の挙動解析に着手し、第2ヒルベルト係数の無駄のない境界を与えると共に、上述の断面種数との関係についても考察した。(1)、(2)は、共に、後藤四郎氏(明治大学)との共同研究によるものである。 本研究では、一般のm-準素イデアルのヒルベルト函数解析にも着手し、次の成果が得られた。その中で、M. V. Pintoによって導入されたSally加群のフィルトレーションの理論が鍵となっている。(3)Sally加群のフィルトレーションに現れる第2番目のSally加群の構造を解析することで、第1ヒルベルト係数がある関係式を満たす様な整閉イデアルのヒルベルト函数の挙動や随伴次数環の構造を決定する事が出来た。本研究代表者は、平成27年度の9月にジェノバ大学(イタリア)を3週間訪れ、M. E. Rossi氏と共に(3)に取り組んだ。 (1)は、Journal of Algebraに、(2)はJournal of Pure and Applied Algebraに於いてそれぞれ学術論文として発表した。(3)の内容については、第37回可換環論シンポジウム(倉敷、11月)、Ring Theory and Representation Theory Seminar(名古屋大学、12月)、日本数学会年会(筑波大学、3月)にて成果発表を行い、さらに、国際会議Workshop on Commutative Algebra(ベトナム、1月)にて招待講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の申請時に研究計画欄にて平成27年度の課題として挙げていた、「巴系イデアルのヒルベルト函数の挙動解析」に関して2編の学術論文が代数学関連の国際専門雑誌であるJoural of AlgebraとJournal of Pure and Applied Algebraに於いて発行された。 さらに、平成28年度の研究課題として挙げていた「第1ヒルベルト係数による随伴次数環の構造解析」に関してジェノバ大学(イタリア)のM. E. Rossi氏と共同研究を開始し,第1ヒルベルト係数による整閉イデアルの新たな特徴付けが得られるなど、既に一定の成果が得られている。 以上の通り、当初の研究課題を達成すると共に、次年度の予備研究にも着手し、一定の成果が得られること等から、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の申請時の研究計画欄に於いて平成28年度の課題として挙げた通り、「第1ヒルベルト係数による随伴次数環の構造解析」に本格的に着手する。平成27年度に行った予備的研究によると、M. V. Pintoによって導入されたSally加群のフィルトレーションにはイデアルのヒルベルト函数や随伴次数環の構造がかなり精密に内包されていることから、その構造解析が問題解決に於いて有効であることが認識された。これらの予備研究を基盤に、Sally加群のフィルトレーションの構造解明を精密に行いながら、イデアルのヒルベルト係数による随伴次数環の構造の分類を行う。
平成27年度の9月にジェノバ大学(イタリア)のM. E. Rossi氏の下を訪れ、本研究に関する共同研究を行ったが、平成28年度も引き続き同氏との研究議論及び情報交換を継続し、本研究に取り組む。
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