研究実績の概要 |
今年度は誘導表現の構成に関し下記の点について考察した. (1) 格子頂点作用素代数のツイスト表現を含めたフュージョン則の決定. (2) 普遍包絡代数の適切な左イデアルの決定. (3) ツイスト加群から (V,T)-加群への拡張. (1) に関しては既約ツイスト加群の量子次元を計算し, ツイスト加群の間のフュージョン則が単純カレントと同じ働きをするであろう既約加群の候補となるための条件を明示した. その内容を含む研究論文はJournal of Algebra へ投稿中である. (2)に関しては, (3) に関連して、適切な普遍包絡環の見直しを行っているところであり, 位相の導入も含め (3) の考え方に沿ったものに改善した後再び考察する予定である. (3) に関しては, 研究遂行の過程で, 北海道大学の田辺氏による (V,T)-加群の研究にたどり着いた. ツイスト加群は異なる自己同型のツイスト加群の直和がツイスト加群とならないなど問題点が現れる. 田辺氏は, その問題解決の一つの考え方として (V,T)-加群を導入した. そこで (V,T)-加群に対応する普遍包絡環の構成を行い, その普遍包絡環を用いて誘導表現を考察することにより, より自然な理論が出来上がると考えている. 実際には田辺氏の設定を少し拡張した設定で考えているが, この設定ではツイスト加群とは限らない加群も扱うことができ, その特別な場合としてツイスト加群が現れ, より俯瞰的観点からツイスト加群を扱うことができる. 現在はこの観点から研究を見直し, 普遍包絡環の再構成を行っている. なお前年度の研究成果であるムーンシャイン加群の構成に関する成果はMathemathische Zeischrift に掲載が決定した. また12月に主催したRIMS共同研究の講演者の渡航旅費に一部本研究費を使用した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ツイスト加群に対応する結合代数の表現の構成を (V,T)-加群に対応する結合代数へ拡張する際にこれまで見えてこなかった問題点が現れた. 当初の研究目的にためにはツイスト加群に対応する物で考察すればよいと考えていたが, 現在では (V,T)-加群に対応する物を考え, その特別な場合がツイスト加群に対応する物ととらえるのがより自然であると思われるので, その拡張への研究が追加されたため当初の目的より遅れてしまった。
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