グロタンディェク群の中で余次元2以上のサイクルのクラスが消える場合、グロタンディェク群に Q をテンソルすると、それは係数環と因子類群の直和に同型になる。よって、コーエンマコーレー錐の解析には、因子類群の元全体のホモロジー代数的な性質の全体像を理解することが必要になってくる。そのため、 Cox 環を考えることが必要となってくる。下の「7研究発表」の中の[雑誌論文]の中の4編の論文の内、前半の二編がCox環に関係した論文である。数年前の藏野の大学院生である越前谷彩香と荒井悠介の修士論文の結果を用いて、ray ideal や ray ideal cone に関する一般論を作り上げて、それによって多変数の正規次数環に対するDemazure 構成を証明した。これは、多変数の正規次数環はある弱い条件の下で正規射影代数多様体のmulti-section 環になるという結果で、今後ますます正規射影代数多様体のmulti-section 環の研究が必要になってくると思われる。 コーエンマコーレー錐の研究のためには、極大コーエンマコーレー加群を調べ上げることが必要不可欠である。極大コーエンマコーレー加群は、係数環をそのネーターの正規化に取り換えると、その正則局所環上の自由加群である。ということもあり、性質の良いネーターの正規化が必要となってくる。Gabber は数年前に、正標数の完備局所整域はネーターの正規化をうまくとると商体の拡大が分離的になることを証明した。そのことは、極大コーエンマコーレー加群の様々な研究で大きく役に立っている。日本大学の下元数馬氏との共同研究で、このGabberの定理にエレメンタリーな別証明を与えることに成功した。
|