研究課題/領域番号 |
15K04829
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
本間 正明 神奈川大学, 理学部, 教授 (80145523)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 射影代数幾何 / 有限体 / 超曲面 / Hermitian超曲面 |
研究実績の概要 |
有限体上定義された平面曲線の有理点の個数に関するSziklai予想を概ね解決した頃,平行して,その一般化として,q個の元からなる有限体上のn次元射影空間内の超曲面について,類似の問題を考えていた.その研究によって,我々がElementary Boundと呼んだ評価式を得た.この評価式は,その超曲面の次数をdとすると,dが1より大きくq+1以下の範囲で意味ある評価を与えており,さらに d が q の平方根+1以上では Deligne の証明した Weil予想の評価より良いものであった.その後 n=3 の場合に,その評価式の上限を到達する場合を完全に決定したが,驚くべきことに,それら上限を到達する曲面は全て非特異曲面であった.最近 Tironi が,一般の n について同様の結果を得たが次数が q+1 のときに直ちに分かる超曲面を除けば,残りは我々の得た非特異曲面の錐であった.我々は n=3の場合の結果は非特異超曲面という枠組みでこそ,nが3より大きな場合への真の拡張が得られるのではないかという着想を得て,2016年度はこの問題に取り組むことに費やした.非特異という条件は,この問題を考えるときには必ずしも使いやすい条件ではないのだが,非特異ならばその超曲面に含まれる線形空間の次元がある程度小さくなるということを用いることによって射影空間の次元 n が奇数の場合に良い評価が得られ,その上限を到達する非特異超曲面を全て決定することができた.この手法を n が偶数の場合に適用しても類似の評価式を得るのであるが,この場合には決して等号をとり得ないということが,n が奇数の場合に我々が得た結果を用いて証明できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要の項に述べたように,Sziklai予想の解決,n次元射影空間内の超曲面に対するElementary Boundの証明,n=3の場合にElementary Boundを到達する曲面の決定, Tironiによる結果という,主として我々が切り拓いてきた道を,さらに進められたことは,順調な進展と自負して良いと思う.
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今後の研究の推進方策 |
概要,進捗状況の各項に述べたように,この道をさらに切り拓くこと,すなわち,n が偶数の場合の非特異超曲面の有理点の個数の良い上限を求めることが今後の課題である. ここまでの研究がそうであったように,韓国,慶尚国立大の Seon Jeong Kim教授と共に共同研究を続ける.
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次年度使用額が生じた理由 |
「第 14 回代数曲線論シンポジウム」を開催するにあたり,海外研究者3名を招聘した.開催時期がクリスマスシーズンにあたり,その航空運賃が高騰することが予想されたので,前倒し請求を行ったのであるが,招聘研究者個々の賢い旅程選択の結果,想定したほどの経費がかからず,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
前述のように経費前倒しを行ったため,2017年度は経費逼迫が予想され共同研究のための渡航回数を減じる覚悟でいたが,次年度使用額が生じたことにより,申請時に想定した程度の経費がまかなえる事になり,それを回避することが可能になった.
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