2017年度の研究概要は以下の通り. 本研究計画の目的の一つとして,「有限体上定義されたm次元射影空間内の超曲面のその体上の有理点の個数の良い評価を得る」ということを掲げた.その超曲面は種々の理由により,既約でなくとも良いのであるが,超平面を既約成分として含まないものを扱うのが自然である.2013年に報告者は,共同研究者の Seon Jeong Kimと共に, elementary bound と名付けた曲面の次数について1次式であるような上限の評価を得,これは線形評価では最良であることを示した.さらに2015年にはm=3の場合にこの上限を到達する曲面をすべて決定していた.この15年の我々の結果の直後に,Andrea Tironi が一般のmについて,elementary bound を到達するものを全て決定したが,それらは,本質的には我々の得た曲面の錐となっていた.従って,曲面が非特異のときには,もっと良い上限が期待でき,その期待される上限は,少なくとも非退化Hermitian超曲面と双曲的2次超曲面が到達すべきものと予想した.この予想がmが奇数ならば正しいということ,および予想した上限を到達する非特異超曲面の決定が成功した. この研究過程において,特に非退化Hermitian超曲面を詳細に調べる必要が生じ,その結果,なぜ埋め込まれる射影空間の次元の偶奇によって取り扱いを別にしなけれならないかの理解はかなりできた.mが偶数の場合の予想が証明できれば,その理解がさらに進むことが期待できる.一方,最近,非退化Hermitian超曲面上の符号を研究する機運があるが,我々の結果は,この方面への応用も期待できる.
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