研究実績の概要 |
代数曲線束の不変量の値の組を座標空間上の点としてプロットしたときの代数曲線束の分布する領域を解明する「ジオグラフィーの問題」の解決を目指し,今年度はクリフォード指数が2である代数曲線束を中心に, (i) 相対的標準因子の自己交点数, 相対的オイラ ー・ポアンカレ標数とファイバーの種数などの不変量の相互関係を与える不等式関係を模索すること, (ii) 様々な構成法を確立することについて研究を行った. クリフォード指数が2である代数曲線束の少しの例外を除いて射影直線上の4重被覆の構造をもつ. ただし, 一般の4重被覆を扱うのは残りの期間では難しいことから, ここで扱う4重被覆はガロア4重被覆と限定した. (i)を解決するために, 代表者によるガロア4重被覆の不変量計算公式を用いて, 相対的標準因子の自己交点数と相対的オイラー・ポアンカレ標数を求め, これらの式の分岐跡の特異点の重複度などから導かれる補正項を詳細に計算することにより, 不変量間の不等式を得ることができた. 一般の射影直線束の4重被覆から得られる代数曲線束に関しては今後の課題として研究を継続する. (ii)に関しては,以前の研究で得た超楕円曲線束の構成法の知見を元にして射影直線束上に多数の有効因子を具体的に与えて, これらを組み合わせて分岐跡とするガロア4重被覆を構成した. これらの2つの成果により, 射影直線束のガロア4重被覆で与えられる代数曲線束のうち, スロープが比較的低い場合に座標空間上での分布領域を大まかに把握することができた. 前年度および上記に得られた成果について論文の執筆を開始した. 平成30年1月には, 本研究課題に関する研究動向の調査および研究成果の総括を目的に,「代数幾何学研究集会-宇部-」を開催した.
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