研究課題/領域番号 |
15K04835
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
田崎 博之 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30179684)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 対称空間 / 対蹠集合 / 実形の交叉 / 複素旗多様体 / 有向実Grassmann多様体 / 対称三対 / スピノル群 |
研究実績の概要 |
コンパクト型Hermite対称空間が既約ではない場合も実形を分類し、それらの交叉が既約の場合に帰着することを1番目の論文で示した。対称三対を利用した実形の交叉が離散的になるための必要十分条件および離散的な場合の交叉の対称三対に関するWeyl群の軌道としての記述を3番目の論文で発表した。階数5の有向実Grassmann多様体の極大対蹠集合の評価を行い、最大値を与える極大対蹠集合を決定し2番目の論文で発表した。 新たにコンパクトLie群の極大対蹠部分群に関する共同研究を田中真紀子氏と始めた。古典型コンパクトLie群の商群の極大対蹠部分群を分類し、これを利用して古典型コンパクトLie環の自己同型群の極大対蹠部分群の分類も得た。これは古典型コンパクトLie環の互いに可換な対合的自己同型の極大集合を分類したことにもなる。例外型コンパクトLie群G_2と対称空間G_2/SO(4)についてもそれらの極大対蹠集合を分類できた。 複素旗多様体内の二つの実形の交叉については、交叉が離散的になるための必要十分条件の対称三対による記述、交叉が離散的な場合に交叉が一般化された対蹠集合になり、対称三対に関連するWeyl群の軌道として記述できることなどを得た。複素旗多様体内の二つの実形の交叉に関するFloerホモロジーを求める際に有効になると思われる対合的正則等長変換の構成もでき、このFloerホモロジーを求める準備がかなり整った。これらの研究は入江博氏、奥田隆幸氏、井川治氏、酒井高司氏との共同研究であり、現在研究成果を論文にまとめているところである。 有向実Grassmann多様体の極大対蹠集合については、階数5の場合の評価を2番目の論文で発表し、組合せ論のこの方面の発展を促した。さらに、階数4以下の分類結果を応用して低次元のスピノル群の極大対蹠部分群の分類を荒井祐介氏と共同で行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
古典型コンパクトLie群の極大対蹠部分群の分類は当初の研究計画にはなかったが、Chen-長野の導入した極地と中心体に関する結果を利用すると分類を完成させることができた。これにより、コンパクトLie環の自己同型群の極大対蹠部分群の分類もできた。このことは、コンパクトLie環の互いに可換な対合的自己同型写像の極大集合の分類にもなる。 さらに古典型コンパクト対称空間をCartan埋め込みによってコンパクトLie群に埋め込むことにより、古典型コンパクト対称空間の極大対蹠集合の分類にも応用できる可能性がある。実際ある場合には、この手法がうまく働くことを確認できているので、おおくの場合に極大対蹠集合の分類を完成させることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
古典型コンパクト対称空間の極大対蹠集合の分類については、Cartan埋め込みによってコンパクトLie群に埋め込むことにより、コンパクトLie群内の極大対蹠部分群の分類を利用する。ただし、Cartan埋め込みは局所同型にはなるが同型になるとは限らないので、被覆写像を通して対蹠集合を考察する必要もある。この場合にもコンパクトLie群の極大対蹠部分群の分類に利用した極地と中心体を利用する手法が有効になると思われる。 他の研究課題についてはおおむね当初の研究計画通りに進んでいるので、これらについては当初の研究計画に沿って研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新しい研究情報の収集と研究集会やセミナーの記録の整理と作成のために人件費・謝金とその他の予算を使う予定だったが、情報提供者の予算からの支出や記録の整理と作成は自前で済んだことからそれらの予算の支出が必要なくなり、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
新しい研究情報の収集と研究集会やセミナーの記録の整理と作成のために人件費・謝金とその他の支出にあてる。計画に変更が生じた場合は新しい研究情報の収集のために書籍購入や旅費にあてる。
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備考 |
このホームページ内の「対蹠集合」のページに2009年から始めた対称空間の対蹠集合に関する一連の研究の情報を掲載している。その内容は研究の概要、研究成果を発表した論文と講演のリストおよび講演のアブストラクトやスライドファイルである。さらに共同研究の打ち合せの記録を「研究セミナー」のページに掲載し、共同研究者間の情報交換に利用している。
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