これまでに、有向実Grassmann多様体の極大対蹠集合の分類を組合せ論の対象の分類に帰着させ、これを利用して階数4以下の場合の分類を完成させ、階数5以上の場合の極大対蹠集合の系列をいくつか構成した。さらにこれらは縦糸と横糸とみなせる集合として記述でき、この観点から新しい極大対蹠集合の系列を構成できた。 コンパクト対称空間の多くはコンパクトLie群内に極地として埋め込むことができる。これを利用してコンパクト対称空間の対蹠集合の性質をコンパクトLie群の対蹠集合の性質に帰着させる。コンパクトLie群の対蹠集合について田中真紀子氏との共同研究で得た成果を適用することで、コンパクト対称空間の対蹠集合の性質を詳しく調べることができた。コンパクトLie群に極地として直接埋め込むことのできないコンパクト対称空間も、その対合的自己同型写像によるコンパクトLie群の半直積に極地として埋め込むことができ、これを利用して対蹠集合の性質を調べることができた。 前年度までに行った例外型コンパクトLie群G_2とその対称空間G_2/SO(4)の極大対蹠集合に関する田中真紀子氏、保倉理美氏との共同研究は、これらの極大対蹠集合とMorse関数の臨界点集合の関係の研究に進んだ。この研究は現在進展中である。 複素旗多様体内の二つの実形の交叉の性質とその応用について、井川治氏、入江博氏、奥田隆幸氏、酒井高司氏との共同研究をこれまで進めてきた。実形を定める二つの対称対の対合的自己同型写像が可換な場合には、コンパクト型Hermite対称空間で得た我々の研究成果全体をほぼ拡張できた。以前の研究では対称対を利用するところを対称三対に置き換える、点対称の作用を使った議論は対合的複素正則等長変換を繰り返し作用させる議論に置き換える等の工夫によりコンパクト型Hermite対称空間での議論を複素旗多様体での議論に拡張できた。
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