1980年代後半,2次元単位球面上の閉曲線対から3次元単位球面内の平坦トーラスを構成する方法が研究代表者により開発された.この構成法を応用して,現在までに,3次元単位球面内の平坦トーラスに関する興味深い研究成果が数多く得られているが,クリフォードトーラスの剛性に関する問題をはじめとして重要な未解決問題も残されている.本研究では,3次元単位球面内の平坦トーラスに関する研究をさらに発展させるため,補助事業期間全体を通じて,次の二つの研究を実施した. (研究A)3次元単位球面内の平坦トーラスの直径は円周率に等しいという「直径予想」に関する研究を推進し,この分野における重要な未解決問題である「クリフォードトーラスの剛性」に関する問題の解決を目指す. (研究B)3次元単位球面内の平坦トーラスについて得られている諸定理の高次元化の問題を研究するため,2次元複素射影空間内のラグランジュ平坦トーラスに関する研究を推進する. 今年度は,直径予想について重点的に研究した.具体的には,連携研究者との研究打合せを行うとともに,国内で開催された微分幾何学関連の研究集会に参加し,直径予想と密接に関連する2重接触予想を解決するための情報収集に努めるとともに,この予想に関する研究発表を行い,多くの研究者とこの問題について議論した.さらに,連携研究者と研究打合せを行い,得られた情報を共有するとともに,2重接触予想を解決するためのアイデアについて検討した.その結果,ある種の条件の下で,予想が解決できるであろうことが明らかになりつつあるが,現時点では,完全解決には至っていない.
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