本研究では一般次元の接触多様体におけるReeb流の柔軟性について新知見を得,それを高次元Weinstein予想の解決に応用することを究極の目標とした.3年の研究期間中に幾つかの進展があったが,結果の深度及び応用の面で十分な域に達することが出来ず,更なる充実努力を要するところで期間満了となって,残念乍ら論文完成までに至らなかった.以下に概要を述べる.2年目に,その時点までに得られた成果をポーランドで開催された国際会議において発表した.これはReeb流の局所的改変に関する結果であり,様々な具体的な部分多様体を不変集合として実現する方法を与えたものである.最終年度には,具体的方法ではなく,応用の広い一般論を定式化した.即ち,接触多様体に部分多様体が与えられ,更にその部分多様体上に接触平面場に横断的な非特異なベクトル場が与えられたという一般的な状況下で,そのベクトル場が元の接触多様体のReeb流に拡張するための必要十分条件を求めた.その条件とは,そのベクトル場が接触平面場の部分多様体への制限(これは最早接触平面場とは限らない)を保存すること,という非常にシンプルな条件である.この結果はこれまでに知られている拡張定理を全て含んでいると考えられる(3次元の横断絡み目の場合や部分多様体が接触部分多様体である場合等).この結果は本研究者のホームページ http://www.math.s.chiba-u.ac.jp/~inaba/ に Extending a vector field on a submanifold to a Reeb vector field on the whole contact manifold というタイトルのpreprintとしてアップロードしている.この他,連携研究者により,流れやシンプレクティック構造に関して本研究に関連する成果が得られている.
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