研究課題
前年度までに得られた、曲面から四元数多様体へのinclusiveなはめ込みに対する四元数不変量について、当初計画の基づき更に解析を進めた。はめ込みのツイスター空間へのリフトが正則であるときに、はめ込みはツイスター正則とよばれその不変量はそのはめ込みの属する正則ホモトピー類内で最小値を与える。また、この不変量はターゲットの四元数多様体が1次元の四元数射影空間HP^1(=S^4)の場合には共形不変なWillmore汎関数に一致するが、この場合には多くの研究がなされている。これらを鑑み、n次元四元数射影空間HP^nへのツイスター正則なinclusiveなはめ込みについて研究した。HP^nのツイスター空間は複素射影空間CP^2n+1であるので、ツイスター正則なはめ込みのリフトは複素射影空間内の代数曲線を与えることになる。上述の四元数不変量の値が、リフトが与える代数曲線の次数dを用いて与えることができた。この結果はn=1のときには知られている結果であるがこれはその一般化である。ただし、n=1の場合は共計構造をとるので、はめ込みの法束を考えることができる等、nが2以上の場合の議論と大きく異なる。本研究では、リフトを曲面上の複素ベクトルの切断として解析し本結果を得た。系として、FridrichによるHP^1へのツイスター正則なはめ込みの法束のオイラー数と曲面の種数間の不等式をHP^nの場合一般化するとともに精密化した等式を得ることができた。共形幾何学の部分多様体論において全臍的な部分多様体に相当するものが、四元数多様体内のそれにおいてはリフトの次数が1であるものであることが、本研究過程から推測される。今後は、このような部分多様体の四元数多様体の部分多様体論における位置づけを深く調べることも行う予定である。
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