本研究の目的は,空間内の曲面の大域的性質を調べる研究方法の1つとしてGauss写像の像の性質と曲面の形状との関係を明らかにし,その応用を与えることである.最終年度となる平成30年度は以下の2つの成果を得ることができた。1つはこれまでの研究の総括として,藤森祥一氏との共著で極小曲面論の専門書を記し発表したことである.この本では極小曲面論の入門書として極小曲面の基本的性質の他,本研究によって得ることができた知見をもとに,Gauss写像の視点から曲面の構成を与えるKenmotsuの表現公式,極小曲面に対するEnneper-Weierstrassの表現公式,さらにGauss写像の除外値問題などを記した.もう1つは3次元de Sitter空間内の平均曲率が1の曲面,特にelliptic catenoidの研究の進展である.梅原雅顕氏,山田光太郎氏,Wayne Rossman氏,國分雅敏氏,藤森祥一氏との共同研究で,elliptic catenoidのうち,これまであまり特徴が知られていなかった2つの例外型のクラスの性質を調べ,特にclosed analytic extensionを許すことを発見し学術誌で発表した.また成果までには至っていないが一般次元のEuclid空間内の完備極小曲面のGauss写像の像の研究を行った.このクラスの一意化定理については結果の最良性が分かっておらず,様々なアプローチによる研究がされている.このことに関して報告者はベトナムの数学者であるPham Hoang Ha氏と共同で代数的退化性を用いた研究を進めている.また,解析的延長の問題については,先の共同研究者に韓国の数学者であるSeong-Deog Yang氏を含めて,catenoidの更なる微分幾何学的性質を調べている.
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