研究実績の概要 |
双曲幾何を定曲率擬リーマン多様体の枠組みにおいて研究すべく,その土台作りに励んだ.定曲率擬リーマン多様体の中でも特に反ド・ジッター空間は近年,双曲幾何との関係において研究が盛んになっている.このことはMessによるThurston's Earthquake Theoremの反ド・ジッター空間を用いた別証明に端を発するものである.私もこの周辺で研究を行いたいと考え,関連する多くの論文に当たった.特にMessの論文,Benedetti-Bonsanteの解説書,BarbotによるGHMC時空に関する一連の論文,Francesのローレンツ・クライン群に関する論文,McMullen-Mohammadi-Ohのド・ジッター空間へのクライン群の作用に関するプレプリントは精査した.またポスドクの椋野純一氏や博士課程の藤野弘基氏とは定期的に反ド・ジッター空間に関するセミナーを行った.2015年の6月にはフランスのオルセーで行われた研究集会Classical and quantum hyperbolic geometry and topologyに参加して,双曲幾何とローレンツ幾何の狭間で行われている研究に関して多くの情報を収集した.以上の準備のもとで,3次元反ド・ジッター空間としてのSL(2,R)の理論をSL(2,C)に拡張する研究を行っている.SL(2,C)には3次元の球面,双曲空間,ド・ジッター空間,反ド・ジッター空間が自然に含まれており,McMullen-Mohammadi-Ohらの研究を含む形でMessの理論を一般化できるものと考えている.
|