研究実績の概要 |
3次元擬リーマン空間形(すなわち3次元の球面,双曲空間,ド・ジッター空間,反ド・ジッター空間)の幾何学を統一的な視点から扱うべく,SL(2,C)の幾何学の構築に力を注いだ.この研究の背景には,SL(2,R)と同一視できる反ド・ジッター空間の幾何学が,2次元双曲空間の幾何学,すなわちタイヒミュラー空間論に応用できるという,MessやAiyama-Akutagawa-Wanの理論がある.また,3次元双曲空間の平均曲率一定曲面に関してはBryantに始まる一連の研究がある.私はこれらの理論を統一する理論の構築を目指している.例えば,2つの擬フックス群を繋ぐ変形を与える構造がSL(2,C)の中に構成できると考えている.一方ではSL(2,C)内の複素平均曲率一定曲面の表現公式の構築を開始した.これはBryant以降のAiyama-Akutagawaによる3次元擬リーマン空間形における平均曲率一定曲面の理論を統一的に扱うものである.この研究を行う上で,具体的には,2019年2月に早稲田大学で「リーマン面・不連続群論」研究集会を早稲田大学の松崎克彦氏と金沢大学の宮地秀樹氏と共同で開催した.また,2018年11月には金沢大学において「SL(2,C)の幾何学」というタイトルの集中講義を行った.このことは本研究の基礎作りに大いに役立った.また,名古屋大学では定期的に,赤嶺新太郎氏,藤野弘基氏と共に曲面論の研究セミナーを行った.
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