研究課題/領域番号 |
15K04842
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
松添 博 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90315177)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 統計多様体 / 情報幾何学 / 共形射影構造 / エスコート分布 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は統計多様体の一般化した共形構造の幾何学を解明し,その幾何学の統計学や可積分系理論などへの応用することである. 統計多様体上で Riemann 計量の共形変形やアファイン接続の射影変形を議論する場合,適合性の条件のために計量と接続は独立して変形ができず,統計多様体の一般化した共形変形が生じる.変形指数型分布族とよばれる統計モデル上でこの幾何学を考える場合,エスコート分布とよばれるもとの確率分布に付随した確率分布と,エスコート分布に関する期待値が有用であることが知られていた.平成29年度までの研究において,エスコート分布は階層構造を持って現れ,幾何学構造も階層的に定義されることを解明し,特に変形指数型分布族に対してその階層構造を具体的に計算している. 平成30年度も昨年度に引き続き,エスコート分布と期待値の階層構造という視点から統計多様体の幾何学を考察した.この幾何学では変形対数関数が重要な役割を果たすが,変形対数関数の構成と統計モデルの正規化が密接に関係していることがわかった.そのため,既存の変形対数関数の修正を行い,統計モデルの正規化問題などを議論した.さらに変形指数型分布族から構成される統計多様体では,一般には双対平坦性と不変性が両立しないことがわかっている.この問題に対して,変形指数型分布族のなす統計多様体上で双対平坦性と不変性が両立するための条件などを,修正した変形指数関数を用いて検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は,これまでの研究を引き続ぎ,変形指数型分布族に対してエスコート分布の階層構造,およびそこから定まる幾何学の階層構造について具体的な計算を行った.特に変形対数関数の構成と統計モデルの正規化が密接に関係していることを指摘し,変形対数関数の再定式化を行うとともに,統計モデルの正規化問題をこの修正した変形対数関数のもとで検討した.再定式化した変形指数関数を用いた統計モデルにおいても,統計多様体の共形射影同値性が有用な役割を果たしていることがわかった.
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今後の研究の推進方策 |
エスコート分布,およびエスコート期待値の階層構造は統計モデルのなす統計多様体の一般化した共形構造と深く関連があると予想しているので,平成31年度も引き続きエスコート分布とエスコート期待値の階層構造に関する研究を継続する.特に昨年度からの研究に引き続き,多変量の変形指数型分布族や行列空間の場合にも,このような統計多様体の階層構造を構成できるか検討する.また平成30年度の研究において,シンプレクティック幾何学との関連や偏微分方程式論への応用なども新しい問題として発見できたので,状況に応じてこれらの問題への展開も検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでの研究で統計モデル多様体には統計多様体の階層構造が構成されるという,当初の予想にはない画期的な研究成果が得られた. 2019年度に情報幾何学の国際会議シリーズが開催されることになった.補助事業の目的をより精緻に達成するため,国際会議に参加して情報収集することは大変有意義である.助成金を旅費,論文掲載料などで使用する.
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