研究課題/領域番号 |
15K04847
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
野原 雄一 香川大学, 教育学部, 准教授 (60447125)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | グラスマン多様体 / 完全可積分系 |
研究実績の概要 |
これまでの研究で、複素ベクトル空間内の2次元部分空間全体のなすグラスマン多様体上の完全可積分系に対して、正則円盤の数え上げにより定まるポテンシャル関数と呼ばれる代数トーラス上の関数の具体的な表示を与えている。異なる完全可積分系に対し、対応するポテンシャル関数たちを互いに移し合う変数変換を構成し、それが Marsh-Rietsch, Rietsch-Williams によるグラスマン多様体のミラーの記述と一致することを示した。この変数変換は我々がこれまでの研究で構成したものとは別の変換であるが、グラスマン多様体上のクラスター代数の構造と関わることから、こちらの方が自然な変換であると考えられる。 この変数変換をシンプレクティック幾何学(フレアー理論)から理解するためには、これらの完全可積分系の間をつなぐような完全可積分系の変形族を構成する必要があると思われる。そこでは特異ファイバーがどのように変形するかをある程度具体的に記述する必要があるため、その準備として最も次元の低い場合である4次元グラスマン多様体に対して、これまでに構成した完全可積分系の特異ファイバーの場所と形をすべて分類した。また、これらの特異ファイバーの変形を具体的に記述するための局所モデルの一つとして、球面の余接束上の完全可積分系とその変形についても研究した。これについては今後も引き続き研究を行う必要があるが、数理物理の研究者との議論を通して、球面の余接束上の完全可積分系の研究はこれ自身で重要な問題であることも分かってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グラスマン多様体のミラー対称性、クラスター代数の構造と整合的なポテンシャル関数の変数変換を新たに構成する必要があることが分かったため、当初の計画とは研究の内容がわずかに異なっているが、この結果自体は本研究の目的にとって必要なものであり、全体としてはほぼ順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
球面の余接束に対して完全可積分系の変形族を構成し、その解析を行う。またその応用として、グラスマン多様体上の完全可積分系の変形を詳しく調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学の異動の準備等で参加を取りやめた研究集会があったため。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度に研究集会を開催する予定があるため、その予算の一部に充てる。
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