現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の状況では接触多様体のシンプレクティック化への安定写像について、モジュライの角の次元の考察からBourgeois et. alによる安定写像の定義に何らかの修正が必要だとの認識に至ったが、本年度はその修正を行い、安定写像モジュライの適切なラベル付けを考察した。Bourgeois et. alらのシンプレクティック化への安定写像の定義では定義域の特異リーマン面は連結とは限らなかったが、本研究ではまず安定写像の定義域は連結な特異リーマン面とした。R×Vを接触多様体Vのシンプレクティック化とする。u_1,…, u_iを連結な特異リーマン面からR×Vへの安定写像もしくはR×S^1からの自明な擬正則シリンダーとする。このとき、その様な安定写像の組U=(u_1,…, u_i)とV=(v_1,…, v_j)の間の同値関係を次で定義する。U, VにR×S^1からの自明な擬正則シリンダーを補充してU=(u_1,…, u_k), V=(v_1,…, v_k)とし、各u_1,…, u_kおよびv_1,…, v_kの順番を適当に入れ替えてu_1=v_1,…, u_k=v_kとなるときUとVは同値であると定義する。そしてこの同値類をラベルとして安定写像のモジュライを構成した。このラベル付けの正当性は2点:一つはモジュライの角の正しい次元が得られる点と、もう一つはシンプレクティック化における擬正則写像のHofer--Gromovコンパクト性に現れるlevel構造と(不要な)R×S^1からの自明な擬正則シリンダーの適切な処理が出来る点である。このモジュライはBourgeois et. alとは組み合わせ的に異なり、Floer理論における代数構造と両立する正しい安定写像のモジュライが得られるものと思われる。
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