研究課題/領域番号 |
15K04851
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
大仁田 義裕 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (90183764)
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研究分担者 |
加藤 信 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (10243354)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 微分幾何学 / 部分多様体 / 調和写像 / ラグランジュ部分多様体 / 可積分系 / フレアーホモロジー |
研究実績の概要 |
本研究課題初年度の今年度は,等径超曲面論に関わるラグランジュ部分多様体の研究や可積分系から観点からの対称空間への調和写像とそのモジュライ空間の研究を推進する一方,研究集会等での研究報告や国内外関連研究者との検討・情報収集等を積極的に行った。等径超曲面のガウス像として得られる複素2次超曲面のコンパクト極小(ゆえに単調)ラグランジュ部分多様体に関する興味深い問題は幾つもあり,中国・清華大 Hui Ma教授との共同研究は継続している。そのハミルトン安定性問題は,等径超曲面が等質な場合は共著論文PartⅡがTohoku Math.J.2015に出版され完全解決したが,非等質な場合は目下の問題である。連携研究者・入江博,Hui Ma,東北大・宮岡礼子教授との共同研究として前研究課題の終盤に始まった等径超曲面のガウス像のHamiltonian non-displaceabilityの研究を推進するため,RIMS共同研究(2015年7月)「等径超曲面のガウス像のフレアーコホモロジー」を実施,共著論文を執筆し数学専門雑誌に投稿した。すべての非等質な場合を含むほとんどの場合にHamiltonian non-displaceableであることが分かった。研究成果は福岡大学微分幾何研究会などで講演している。京大RIMS(小野薫教授)滞在中のHong Van Le教授(チェコ・IMAS)にはOCAMIに招き部分多様体の特殊幾何に関して最新の研究の講演をお願いし研究交流をもった。連携研究者・梶ヶ谷とは,非コンパクト型エルミート対称空間内の等質ラグランジュ部分多様体の構成・分類問題について議論・情報交換が出来,広島大研究員・橋永貴弘を招聘して梶ヶ谷は活発に検討,成果を挙げている。また,研究協力者・橋本要(OCAMI特任助教)は,本研究課題に関する積極的な研究交流,情報収集等を行った。また,研究協力者・奥原沙季(数学研究所員)は,tt*戸田方程式など調和写像の可積分系的側面に関する検討・情報収集で研究課題に協力している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前研究課題から継続のHui Ma, 宮岡礼子,入江博との共同研究は,等径超曲面のガウス像のHamiltonian non-displaceability問題に対して,殆ど全ての場合(相異なる主曲率の個数g=3,4,6で一つ主曲率の重複度が1の場合を除く)にHamiltonian non-displaceableであるという,申請当初の計画を超える結果が得られ,本研究課題の研究に大きな前進を与えるものである。今年度(平成27年度)は計画通り,RIMS共同研究として集中的な共同研究も行い,さらに,4者による国際共著論文H.Iriyeh, H.Ma, R.Miyaoka and Y.Ohnita, Hamiltonian non-displaceability of Gauss images of isoparametric hypersurfaces, arXiv:1510.05057v1 [math.DG] 17 Oct.2015.を書き上げ,数学専門雑誌に投稿を済ませている(現在,査読者からポジティブな意見を受け,原稿のマイナーな修正中)。海外連携研究者であるJ.Berndt教授(Kings College London)やイタリアのF.Podest\'a教授らの研究グループとの研究連絡・研究交流も持っており連携は強まっている。また, Hong Van Le教授のセミナー講演と研究交流は,部分多様体の特殊幾何学研究の新たな展開を示唆するもので,この領域の若手研究者・河井公大朗氏(東大・学振PD)も参加してLe教授らとの新たな国際共同研究への機会となった。
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今後の研究の推進方策 |
今回のHamiltonian non-displaceabilityの結果は,等径超曲面のガウス像のフレアーホモロジーおよびliftedフレアーホモロジーの非自明性を研究することで得られたものであるが, 残された場合(g=3,4,6で一つの重複度が1の場合。既知の分類結果によって等質)のHamiltonian non-displaceabilityの研究をすることや,g=4およびg=6の場合に,そのガウス像のフレアーホモロジーを具体的に決定することは今後の問題である。今後,標準球面の等径超曲面の構造をより深く検討することによって,そのガウス像のフレアーホモロジーの一層の研究を行う。とくに,クリフォード代数の表現によって構成されるOT-FKM型等径超曲面のクラスは殆ど全ての非等質等径超曲面を含み,そのガウス像の幾何学的およびトポロジー的な性質・構造は,興味深く本研究に重要と思われ,徹底的な検討を進める必要がある。フレアーホモロジー研究の基礎となる,等径超曲面のガウス像の上の適切なモース関数の探索とそのモースホモロジーの構成を試みたいと考えている。また,当初研究計画を踏まえて,連携研究者らと協働して,台湾,ドイツ,イギリス,イタリアなど関連の海外研究者らとの有機的な連携を積極的に構築して,研究課題であるエルミート対称空間内のラグランジュ部分多様体研究や調和写像に関わる可積分系やモジュライ空間,および有限次元・無限次元等径部分多様体の研究を推進する。とくに,連携研究者らと協力して,有限次元および無限次元ヒルベルト空間内の等径部分多様体の等質性定理(Thorbergsson, Olmos, Heintze-Liu, Gorodski-Heintze)の検討・分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,研究代表者は,中国・清華大学に研究滞在して,Hui Ma教授との共同研究に取り組む予定であったが,大学の公務等のため日程を調整することができず,次年度9月に中国出張する予定に変更した。また,連携研究者・Martin Guest(早稲田大学)と研究代表者は,本科研費を使って国立台湾大学の研究者を招へいして微分幾何・幾何解析ワークショップ実施を検討していたが,国内外の他の国際研究集会開催日程などとの調整が困難となり,台湾側研究者と協議して,次年度12月に早稲田大学で開催することに変更したため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度(平成28年度)は,9月に中国での関連の微分幾何学分野の国際研究集会参加および中国・清華大学を訪問してHui Ma教授との共同研究を行うための研究代表者等の旅費に使用する。連携研究者・Martin Guest(早稲田大学)と研究代表者が組織して12月に早稲田大学で開催する微分幾何・幾何解析に関する研究集会に台湾から関連研究者および外国人講演者を招へいする旅費として使用する。
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