研究実績の概要 |
(M,J,g)を計量gの基本形式がΩであるようなエルミート多様体とする.局所共形ケーラー多様体(略してlcK)とは, ある閉1形式θが存在してdΩ= θ∧Ωをみたすものである. θはLee形式と呼ばれ, gの接続∇が∇θ=0をみたすとき, MはVaisman多様体と言われる. この研究課題のテーマの一つである「LcK多様体がいつVaisman多様体になるか」という問題を考えた. Mとして等質lcK多様体G/Hをとり, 今年度は次の結果を得た. C(G)をGの中心, N(H)をコンパクト群HのGにおける正規化群とする. このとき次のことを示した. 【定理.】(G/H,Ω,θ,J)を等質lcK多様体とする. N(H)/C(G)をコンパクトとする.もしθ(C(G))がゼロでないならば(G/H,Ω,θ,J)はVaismanである. この定理から以前示した「Gがreductiveリー群, N(H)がコンパクトならばG/HはVaismanである」という4人(D. Alekseevsky, V. Cotes, K. Hasegawa, Y. Kamishiam)の結果が導き出せるためこの定理は一般的なリー群に対して拡張したことになる. キーとなるアイデアはコンパクトlcK リー群は必然的には4次元となりS^1 x SU(2)に同型となる. さらにその上の任意の左不変lcK構造は常にVaismanであることまでわかっていることである. また応用として, もしGが単連結 lcK群(リー群自身がlcK構造を持つ)であり左不変可換複素構造を持つならば, GはVaismanであり, RとHeisenbergリー群 Nとの直積になることを示した. これはAndradaとOrigliaの結果を精密化したものである. 以上が現時点で得られた概要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
4人で共同して研究しているため, 早く結果がチェックできたことによる. また, 今回研究分担者長谷川敬三氏たちが主催する「複素幾何」に関する国際研究集会が 開催され、多くの最新の情報を得て, それらを斟酌することで, シャープな結果を導くことができたこともある.
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