昨年度にひきつづき離散微分幾何の立場から離散曲線やその離散的変形を考察した。成果は次の二点である。その一(曲線短縮流の離散化):曲線短縮流は平面曲線の時間発展で、その法線速度が曲率であるため平均曲率流の1次元版として知られており、可積分系と非可積分系の中間地点に位置するような偏微分方程式である。曲線短縮流の初期値問題を数値的に解く際には、数値的不安定現象を回避するためにいろいろな非自明な接線速度を導入することが推奨されている。今年度の研究では、従来の数値スキームに比べてシンプルな離散的接線速度を提案し、曲線短縮流の数値シミュレーションを行った。現在、収束の議論などについて研究を継続中である。その二(平面離散弾性曲線の構成):速さ1の平面弾性曲線を離散化したものとして、頂点間の距離が一定の平面離散弾性曲線が知られている。今年度の研究では、その離散曲率がみたす常差分方程式の解を楕円テータ関数によって表示して、平面離散弾性曲線を数値的に構成した。平面離散弾性曲線の座標成分を明示的に楕円テータ関数で書き下すことが今後の研究課題である。また、昨年度までの研究成果であるミンコフスキー平面内の曲線の等長変形(井ノ口順一と梶原健司と丸野健一と太田泰広と朴炯基の各氏との共同研究)および渦糸方程式の離散化と明示公式(廣瀬三平と井ノ口順一と梶原健司と太田泰広の各氏との共同研究)をそれぞれ論文にまとめた。まもなく出版予定である。
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