最終年度であるので、本研究課題の研究で昨年度まで得られた成果を精査し、次に繋がる研究の芽を探すことに費やしたというのが、今年度の活動の概観である。3次元ユークリッド空間内の波面(ウエーブフロント)の特異点として典型的な尖り辺(カスピダルエッヂ)と燕の尾(スワローテイル)の特異点について計算をした。これらの特異点は、源と行き先の座標変換で尖り辺(カスピダルエッヂ)と燕の尾(スワローテイル)の標準形に還元するものであるが、微分幾何的な研究対象として見た場合には、行き先の座標変換を回転に制限する必要がある。源の座標変換と行き先の回転で写像を標準形に還元する手続きを解析して、これはほぼ完了した。計算はかなり面倒であるので、理解しやすい様に整理して発表するべく準備中である。それから、東北師範大学数学統計学院の裴東河教授の学生である于海鴎を半年間埼玉大学に招聘して、これらの計算の3次元ミンコフスキー空間への一般化を解析しはじめた。幾つかの典型的な場合にはユークリッド空間の場合と同様であることが確認できたが、尖り辺(カスピダルエッヂ)の特異曲線が光的な場合、接触平面が光的な場合、特異曲面の拡張された意味での接平面が光的な場合など、平行に計算が進まない場合が幾つかあり試行錯誤を重ねている。なお、漸近線の特異点が尖り辺(カスピダルエッヂ)と放物点軌跡(パラボリックローカス)の閉包の交点に現れるが、これはかなり退化している特異点で、現時点では解析が終了していない。
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