研究課題/領域番号 |
15K04868
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
合田 洋 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60266913)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ねじれアレキサンダー多項式 / 結び目 / 体積 |
研究実績の概要 |
今年度は研究初年度なので,本研究に必要な専門的知識を得るために書籍,論文,特に研究代表者にとっては未習であった複素幾何および表現論の専門書を購入し集中的に読んだ.その結果,当初から本研究の一つの鍵となると考えていた先行研究であるカスプ付き双曲三次元多様体の高次ライデマイスタートーション関係の論文をかなり理解することができた.acyclicライデマイスタートーションとnon-acyclicライデマイスタートーションに関わる先行研究論文にある手法を応用することで,本研究の目的の一つであったある結び目不変量を用いての結び目補空間の体積公式を得ることができたと現在考えている.証明の詳細を再検討すると同時に論文執筆の準備を始めている.一方で,予定していた具体例の計算について,ホロノミー表現および幾何的状況のよく知られている8の字結び目についてはかなり満足のいく結果が得られた.これについては上記得られた公式の威力を十分に反映する計算結果となっている.更に様々な結び目に対して具体例の計算を行いたいところであるが,計算の要であるホロノミー表現が単純で計算可能であるものの例が少なく,コンピュータの性能も含めてなかなか難しい状況であることが判明した. 今年度は研究初年度であり自らの研究発表は行わなかった.専門的知識の提供を受けるために2件農工大セミナーにて専門家に講演して頂き,また4回研究集会参加を行った.これらの招へい,出張では当該研究に関わる有益な情報を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
双曲多様体の基本的な事項の勉強から始め,研究に必要だと思われる複素幾何および表現論の基礎の知識の拡充を行うことが出来た.研究目的のうちの一つ「具体的な双曲結び目のトーションの計算」については,ホロノミー表現その他幾何学的性質のよく知られている8の字結び目についてはかなり満足な計算結果が得られた.また研究目的の一つである「結び目不変量による体積表示」についてはほぼ完全なものが得られたと考え現在証明の詳細を再点検中である.
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今後の研究の推進方策 |
研究目的のうちの一つ「具体的な双曲結び目のトーションの計算」について,8の字結び目以外の双曲結び目,具体的には5_2結び目と呼ばれている結び目に対してトーションの計算を試みたい.これにはかなりの計算量が必要だと推測されるので,それに対応できる性能を備えたコンピュータと計算ソフトの購入を予定している.また,研究目的の一つである「トーションによる体積表示」については,現在得られたと考えている結果を元に他の結び目不変量やゼータ関数との関わりを調査したい.ただし他の結び目不変量やゼータ関数の知識がまだ足らないのでその拡充にも努める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は研究初年度ということもあり研究時間の大半を専門的知識の勉強に費やした.書籍を購入し自分の研究室にて知識の拡充に努める時間が長かった.複素幾何,表現論の理論は計画段階で想定したよりもはるかに精緻で難解であったため,その習得に時間を要した.その結果自ら研究発表をしレヴューを受けるなどの活動が無く,当初の予定より旅費および計算機実験に使うための最新コンピュータの購入やソフトウエアの更新も無かった.
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次年度使用額の使用計画 |
今年度終盤になってある程度の研究成果を得ることができたため,次年度には自ら研究発表をしレヴューを受けるなどの活動を行いたい.まず5月に秋田大学にてレヴューを受けるための出張を予定している.現在得られている知見を元に他の結び目不変量への応用をはかるための専門書の購入および関連する研究の最新情報を得るための出張も予定している.具体的には8月22日~25日に大阪電気通信大学で開催される拡大KOOKセミナー2016,10月24日から5日間奈良で開催予定のTopology and Geometry of Low-dimensional manifolds 2016 等に参加することを計画している.また,理論的な準備が整えば具体例の計算のために,性能の高いコンピュータおよび計算機ソフトの購入も考えている.
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