研究実績の概要 |
1.3以上である任意の自然数nに対して,本質的自由タングルが入れ子になっているようなn糸タングルを構成した。応用として,本質的なn糸自由タングル分解をもつ結び目で,(2n-3)個の異なる本質的タングル球面を許容するようなものの具体例を構成することに成功した。本結果は,「本質的な2糸自由タングル分解をもつ結び目の本質的タングル球面は一意的である」という小沢誠氏(駒澤大学)により得られていた定理が一般には成立しないことを示している。
2.矯飾的手術予想の解決へ向けて市原一裕氏(日本大学)と共同研究を行った。当該年度においては,コンウェイ表示[2x,2-2x,2x,2,-2x] (ただし,xは2以上の自然数)で表される2橋結び目のデーン手術により得られるホモロジー3-球面は互いに異なることを証明した。本結果の証明にあたっては,キャッソン不変量,τ不変量,ヒーガード-フレアホモロジーにおける補正項といった不変量では不十分であったが,SL(2,C)キャッソン不変量を用いることにより,その証明に成功した。
3.2014年に得ていた,結び目とタングルのトンネル数に纏わる関係式について,絡み目への拡張を試みた。成果として,タングルに含まれるループ成分数で補正することで,既知のものと同様の関係式を得ることに成功した。特に,結び目のタングル分解においてはループ成分が存在しないので,本結果は既存の結果の自然な拡張になっている。
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