研究課題/領域番号 |
15K04870
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
玉木 大 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (10252058)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 離散モース理論 / 2圏 / 分類空間 |
研究実績の概要 |
本研究は, グラフの配置空間の小圏を用いたモデルの高次元への拡張と離散モース理論の精密化の2つの研究テーマを融合させたものであるが, 2015年度は主に離散モース理論の精密化について研究した。得られた結果は以下の通りである: (1) 有限正則CW複体 X 上の離散モース関数に対し, 忠実性 (faithful) の概念を導入し, 任意の離散モース関数が忠実なものに取り替えられることを示した。(2) 忠実な離散モース関数に付随する reduced flow path の概念を導入し, 臨界胞体を対象とし reduced flow path を射とする小圏 C(f) を構成した。(3) reduced flow path の集合 FP(f) に順序を定義し, FP(f) が順序集合となることを示した。(4) その順序を用い C(f) が2圏になることを示した。(5) FP(f) を2次の射が自明なものからなる2圏とみなし, FP(f) から C(f) へ colax functor τ を構成した。(6) τが分類空間の間のホモトピー同値を誘導することを示した。 本研究の離散モース理論についての目標は, C(f) の分類空間と元の X がホモトピー同値になることであるが, 以上のことにより後は FP(f) の分類空間と X がホモトピー同値を示せばよいことになった。それを示すために, FP(f) を用いて stable subdivision と呼ばれる X の胞体分割の細分 Sd(f) を構成した。X の stable subdivision の face poset F(Sd(f)) の分類空間は X と同相であるため, あとは F(Sd(f)) と FP(f) が poset として同型になることを示せばよいことになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
配置空間の cellular stratified space に離散モース理論を応用するためには, まず離散モース理論の研究を進める必要があることが判明したため, 配置空間の具体的モデルの構成の研究は中断し, 離散モース理論の研究を行なった。幸い, 離散モース理論の研究は大きく進展し, Cohen-Jones-Segal のモース理論の離散版の完成が近づいた。その中でも flow の概念が確立されたことは, 離散モース理論の幾何学的応用への幅が広がったことを意味する。これらを総合的に判断し, おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
離散モース理論の研究が予想以上に進み, 新しいアイデアも出てきたので, まず離散モース理論に集中して取り組み, Cohen-Jones-Segal のモース理論の離散版を完成させることを最優先としたい。また, その中で現れた派生的な問題についても取り組みたい。 Cohen-Jones-Segalモース理論の離散版が完成した後で, その具体的な応用先として配置空間, 特に球面の配置空間の場合を研究する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
8月にシンガポールで行なわれた国際研究集会に2週間参加したが, その参加費用が全てシンガポール国立大学の経費から支出され, 当該助成金から支出する必要がなくなったため, 予定より支出が少なくなった。また, 2016年度からポスドク研究員を受け入れることが決まったので, 授業等で出張できない時期にその研究員に, 研究協力者として海外の研究集会に参加して最新の研究成果に関する情報収集を行なってもらうことにした。その旅費として使うために繰り越したい。
|
次年度使用額の使用計画 |
6月, 7月など授業などで出張できない時期に, 欧米では国際研究集会が開催され, 最新の研究成果が発表されている。次年度使用額は, ポスドク研究員に研究協力者としてその情報収集を行なってもらうための旅費として, 平成28年度請求額と合せて用いる。
|