研究実績の概要 |
本研究の目的は, 離散モース理論の精密化とその応用であるが, 2018年度では, 精密化としては前年度までに行なった構成の関手性について研究した。また, 精密化の過程で浮上した stratified space の構造に関する研究も行なった。具体的には以下の通りである: 2017年度までに行なった研究で, 正則有限複体 X 上の離散モース関数 f に対し, f の臨界胞体を対象とする2圏 C(f) を構成し, その分類空間 BC(f) が X とホモトピー同値であることを証明したが, この構成 C が関手的であることを証明した。そのためには, 「離散モース関数を持つ正則有限複体の成す圏」を構成する必要があるが, それは容易ではない。そこで, 離散モース関数から X の面ポセット F(X) 上の acyclic partial matching が構成されることに着目し, acyclic partial matching を持つ正則有限複体の成す圏を定義し, C をその圏から normal colax functor を射とする2圏の成す圏への関手とみなすことができることを証明した。このことから, C(f) に対する分類空間の構成として, normal colax nerve を用いたものが最も適切であることが分かった。このことは, 2018年7月にブラジルの Bahia 州立大学で開催された国際会議で発表した。 2017年度には, ハーバード大学 Hiro Lee Tanaka 氏との共同研究により, stratified space の exit-path 圏の研究を行なったが, それにより BC(f) の exit-path category が∞圏の構造を持つことが証明された。これは 2018年9月に京都大学で開催された国際会議で発表した。
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