研究課題/領域番号 |
15K04872
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
南 範彦 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80166090)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | isogeny / 無限ループ空間 / ホモトピー論 / モチビックホモトピー論 |
研究実績の概要 |
今年度2つの研究集会を開催した,先ず大沢健夫氏(名大多元)らと名大多元にて開催した国際会議Bousfield classes form a set: a workshop in memory of Tetsusuke Ohkawa. に於いては,その講演者の選定を一任され,本研究にも有用となる研究者を選定した.基調講演は,三角圏のNeeman氏,抽象的ホモトピー論のCascaberta氏,モチビックホモトピー論のKelly氏らという,世界の指導的研究者たちによる連続講演とし,更に国内の若手俊英による本研究と関連が出てくるかもしれない最先端研究についてのサーベイ講演を多数設けた.研究代表者南自身も,トポロジカル絶縁体に関する簡単な紹介を行った.これは故大川哲介氏が幼少期に化学に傾倒していたことを偲び,物質科学とトポロジーとの関係を紹介したものである.これに関しては数理解析研究所の講究録にも手短な紹介記事を書いたが,これを機に,大川哲介氏が幼少期に慣れ親しんだ周期表を理論的に説明する量子場の理論から,大川哲介氏の定理が関わるBousfield classの観点においてK理論の上の階層に現れる楕円コホモロジー,TMFの共形場理論やストリング理論といった最先端物理までの流れを,トポロジスト向けに簡潔に紹介する論文も書き始めた. Novikov予想周辺に関しては,今年も年度末に山崎正之氏(岡山理科大学)と一緒に勉強会的色合いの強い研究集会を共催し,そこで南は3つの一時間講演を行った. 本研究の元々の動機となったBeilinsonの研究により近いモチビックな側面に関しては,斎藤秀司氏(東工大)と佐藤周友氏(中央大)の主催する八ヶ岳ワークショップにおいて,専門家の間でしばしば引用されるにも拘らず解読が困難であったvan der Kallen acyclicity の証明を理解可能に解読した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大川哲介氏追悼研究集会は大成功となったので,Springer Proceedings in Mathematics and Statistics のシリーズから,大沢氏と南をeditorとしてそのプロシーディングが発行されることになったのである.この研究集会の準備と,それに続くプロシーディングのeditorとしての仕事は,南が Algebraic & Geometric Topology のeditorでもあることも有り,本研究において元来提唱した研究に集中する時間を予想外に奪ってしまった. しかしながら,このような作業は,本研究の応用の可能性を広げるには,極めて有効であると考える.例えば,大川哲介氏が幼少期に慣れ親しんだ周期表を理論的に説明する量子場の理論から,大川哲介氏の定理が関わるBousfield classの観点においてK理論の上の階層に現れる楕円コホモロジー,TMFの共形場理論やストリング理論といった最先端物理までの流れを,トポロジスト向けに簡潔に紹介する論文も書き始めたのは,南本人が現在このプロシーディングに投稿するためで有る.このような物理的考察が本研究と関連するかもしれないのは,楕円コホモロジー,TMFの共形場理論やストリング理論との関連もさることながら,物理と本研究の目標の一つとして捉えていたNovikov予想の周辺には共に、Connes氏らの非可換幾何から見通し良く眺めれる部分があり,新たな洞察力が得られる可能性も期待できるからである.
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今後の研究の推進方策 |
当面は,研究代表者の発見したBeilinson-Roenblyum Isogeny 定理の極めて見通しの良い証明を、離散群に対するノビコフ予想及びその代数的K理論類似の枠組みに応用するためのIsogeny」的手法確立を目標とする。そのために、引き続き山崎正之氏とNovikov予想に関する勉強会を開催する.またそのコンヌ流非可換幾何的アプローチの深い理解のために,物理的側面の理解も深めるために、関連の数理物理、表現論、幾何の研究集会等に参加する.元来のBeilinson-Roenblyum Isogeny 定理の動機であったモチーフの理論との関係に関しては,引き続き斎藤秀司氏と佐藤周友氏の八ヶ岳ワークショップに参加して,モチビックな観点からの理解を,モチビックホモトピー論を通して深める. なお,今年度当初に,研究代表者南がここ数年多大なエネルギーを注いできた朝倉数学辞典の担当部を遂に書き上げることが出来た.辞書と言う性質からページ数が極めて限られているが,所々に最先端研究を反映させておいた.この準備を通して,研究代表者南は,本研究にも間接的に役立つことが期待してしまう程に,大いに勉強させて頂いた.
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