研究実績の概要 |
数論的代数幾何への応用を念頭に構築されたMorel-VoevodskyのA1ホモトピー論は,少なくとも基礎環が複素数もしくはその部分環の場合には,古典的ホモトピー論の情報を全て含むため,古典的ホモトピー論への,数論・代数幾何からの系統的な応用が期待される. 古典的ホモトピー論においては,Postnikov塔や色彩塔といった階層条件が重要な役割を果たすため数論・代数幾何においても適当な階層条件を見つけたいのだが,それが難しい. 昨年度の研究に於いて,高次ファノ多様体における鈴木拓氏の研究に現れる有るベルヌーイ数に関わる予想とその一般化が解決出来,高次ファノ多様体に関する新しい知見を得た.この結果はAraujo-Castravetが2013年にAmerican Journal of Mathematicsに発表した結果(n=2,3の場合)の一般化(一般のnの場合)でそのサマリを数理解析講究録に発表したが,詳細は書かずに今年度の研究に入ってしまった.それは,深い数学をやっているはずなのに,仮定が強すぎて適応範囲が狭く,しかもその結論がそれ程強くない,どうしてだろうと,ずっと考え込んで来たからである. さて,極めて喜ばしいことに,今年度の研究の最終段階に於いて,これらの問題の解決に成功した.その要点は,(1)仮定に現れるを高次ファノ多様体の定める階層よりも遥かに広い階層とし,(2) 結論をボット塔を用いて,建築の文献にも現れる単織多様体と,古来最も基本的な有理多様体の間の階層という,極めて代数幾何的に基本的な階層とし,(3)応用例として,5次元多様体でホッジ予想の成立する新しい階層の提出,(4)更に,単織多様体に対してBogomolov-Miyaoka-Yau型不等式がどのようなものであるべきかの,一つの知見を得た.得られたばかりなので未だarxivにも出してないが,急ぎ発表したい.
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